歯周炎は歯槽骨の吸収を特徴とする疾患である。この炎症局所の骨吸収には、マクロファ-ジや多形核白血球が産生するインタ-ロイキン1(ILー1)が関与していると考えられる。そこで、本研究ではマクロファ-ジ株化細胞の培養上清からILー1インヒビタ-を精製し、歯槽骨吸収阻害剤としての応用の可能性を検討する。 本年度は、前年度に続きマクロファ-ジ株化細胞P388D_1を大腸菌のリポ多糖で剌激し、その培養上清からカラムクロマトグラフィ-法によりILー1インヒビタ-を約200mg精製した。ついで、同インヒビタ-のアミノ酸組成を決定した。精製ILー1インヒビタ-は、56℃、30分間や100℃、5分間の加熱処理やIMHCl処理に対して安定であったが、トリプシンやDithiothreitolでの処理でほぼ完全に失活した。同インヒビタ-は、マウス由来のILー1、組換えヒトILー1αおよび組換えヒトILー1βの低濃度のコンカナバリンA・共存下におけるC3H/HeJ胸腺細胞の[ ^3H]チミジン取り込み活性を強く抑制した。しかし、インタ-ロイキン2存在下におけるCTLLー2細胞による[ ^3H]チミジン取り込みには影響しなかった。 ついで、ILー1インヒビタ-の歯槽骨吸収阻害活性を評価するために、マウス頭蓋骨の器官培養を用いた骨吸収実験系を確立した。すなわち、妊娠マウスの皮下に ^<45>CaCl_2して、24時間後に胎児を取り出し、その橈骨と尺骨を48〜72時間器官培養する。培養終了後、培養液中に遊離してきた放射能活性を測定した。器官培養時に、既に骨吸収を誘導することが知られているリポ多糖を添加したところ有意な量の ^<45>Caが培養上清中に遊離された。今後、本実験系におけるILー1の骨吸収活性を測定するとともに、ILー1インヒビタ-の骨吸収阻害活性について調べる予定である。
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