研究概要 |
歯周炎は歯槽骨の吸収を特微とする疾患である。この炎症局所の骨吸収には、マクロファージや多形核白血球が産生するインターロイキン1(IL-1)が関与していると考えられる。そこで、歯槽骨吸収阻害剤の開発を目ざしてマクロファージの培養上清からIL-1インヒビターの分離・精製し、その骨吸収阻害活性を調べた。 大腸菌のリポ多糖を72時間マウスマクロファージ株化細胞P3888D_1に作用させたところ、その培養上清中にIL-1インヒビターが遊離された。そこで、このインヒビターを酢酸抽出、Bio-Gel P-60ゲル濾過法、DEAE-Sepharose CL-6Bイオン交換クロマトグラフィー、C18疎水性カラムやゲル濾過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーで精製した。精製したIL-1インヒビターはSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分子量67,000付近に1本のタンパク質バンドとして認められた。等電点は4.8であった。同インヒビターは熱や酸に対して安定で、トリプシンヤdi-thiothreitolによる処理で不活化された。同インヒビターはマウスやヒト由来のIL-1によるC3H/HeJマウス胸腺細胞の増殖を抑制したが、IL-2によるIL-2依存性CTLL-2細胞の増殖や高濃度のコンカナバリンAによるC3H/HeJマウス胸腺細胞の増殖には影響しなかった。以上の所見は、今回精製したインヒビターがIL-1に特異的に作用することを示している。 ついで、IL-1刺激BALB/Cマウス頭蓋骨の吸収に及ぼすマウスマクロファージ様株化細胞由来のIL-1インヒビターの影響を調べた。その結果、精製したIL-1インヒビターは1〜5μg/mLで10^<-11>MのIL-1の骨吸収活性を完全に抑制した。この結果から、本インヒビターが歯周炎における骨吸収のコントロールに有用である可能性が考えられた。
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