研究概要 |
神経系の情報伝達に関与する神経伝達物質に対し.免疫担当細胞の応答の有無とその機構を.受容体の存在とその性質,トランスメンブラン機構の点より検討した。ヒトT細胞由来のJurkat細胞において.イソプロテレノ-ル,プロスタグランジンE_2,NECA,コレラ毒素,フォルスコリンは.cyclic AMP量を増加させたことより.本細胞にはβ受容体,プロスタグランジンE_2受容体,A_2アデノシン受容体が存在し.いずれも促進性G蛋白質,アデニル酸シクラ-ゼと機能的に共役することを見いだした。一方,アセチルコリン(ACh),オキソトレモリンーM(OxoーM)は一過性に[Ca^<2+>]iを上昇させ、その効果をピレンゼピンが抑制した。このことよりJurkat細胞にムスカリン性ACh受容体の存在が批定された。そこで[ ^3H]QNB結合のスカッチャ-ド解析をしたところ、本細胞1個あたり45,000分子の受容体がkd値14.1nMで発現することがわかった。ノ-ザンブロット解析したところこの受容体はm_3サブタイプであることが明らかになった。次にOxoーMは[Ca^<2+>]i上昇とともに細胞内イノシト-ルリン酸濃度も上昇させたので.m_3のACh受容体活性化はイノシト-ルリン酸産生を介し[Ca^<2+>]iを上昇させると推定した。フィトヘマグルチンで抗原受容体を刺激するとやはり[Ca^<2+>]iが上昇したが.コレラ毒素処理はほぼ完全にこれを抑制した。一方、OxoーMの[Ca^<2+>]i上昇効果に対しコレラ毒素は全く影響を及ぼさなかった。したがってm_3ACh受容体を介する[Ca^<2+>]i上昇機構は、抗原受容体刺激に伴う[Ca^<2+>]i上昇機構とは独立していると推定した。さらに.ホルボ-ルエステルのPMA処理は.OxoーMの[Ca^<2+>]i上昇効果を著明に抑制したが.フィトヘマグルチニンによる[Ca^<2+>]i上昇には影響しなかったので.プロテインキナ-ゼCはACh受容体を介する[Ca^<2+>]i上昇機構をフィ-ドバック抑制すると考えた。なお神経伝達物質に対する免疫細胞の電気生理学的応答の予備検討もした。
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