研究概要 |
(1)大腸菌のポリアミン輸送タンパク質遺伝子は3種存在し,1種はスペルミジン(SPD)を優先的に輸送するタンパク質をコ-ドし(クロ-ンpPT104),遺伝地図上15分に存在した。このタンパク質の性質については昨年度詳しく解析したので,本年度はプトレスシン(PUT)のみを輸送する2種の遺伝子(クロ-ンpPT79とpPT71,それぞれ遺伝地図上の19分と16分に存在する)にコ-ドされているタンパク質の性質を検討した。pPT79によりコ-ドされているタンパク質はpPT104と同様に,FGHIの4種のタンパク質であった。F(Mr40K)はペリプラズムに存在する基質(PUT)結合タンパク質であった。G(Mr45K)はATP結合部位を持つ膜表在性タンパク質で,輸送に必要なエネルギ-供給に関与していた。H(Mr35K)とI(Mr31K)は6ケ所の膜貫通部位をもつ膜タンパク質で,PUTが通過するチャンネルを形成するタンパク質であった。この構成はpPT104にコ-ドされている4種のタンパク質に非常に良く似ていた。また,比較的弱いPUT輸送活性をもつpPTにコ-ドされているタンパク質は1種類で,Mr46Kの12ケ所に膜貫通部位をもつタンパク質であった。このタンパク質はオルニチン・PUTのアンチポ-タ-活性を有し,細胞内に過剰に蓄積したPUTの排出に関与していることが判明した。この反応はエネルギ-を必要としなかった。また,この遺伝子のプロモ-タ-部位は複雑な構造をしており,刺激に反応しmRNA合成を促進するエンハンサ-タンパク質の存在が示唆された。 (2)動物細胞のCDNAライブラリ-より,上記大腸菌の活性部位に相当すると思われるアミノ酸に対応するDNAを2種合成し,このDNAをプライマ-としてPCRにより増幅する0.5KbのDNA断片を得た。このDNA断片とハンブリダイズするcDNAをクロ-ニングし,その性質を検討中である。
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