研究概要 |
(1)大腸菌の3種のポリアミン輸送系の1つであるスペルミジン(SPD)優先輸送系の性質を遺伝学的及び生化学的手法を用いて詳しく解析した。この輸送系は4種のA(Mr45K),B(Mr33K),C(Mr31K),D(Mr43K)蛋白質より成り立っているが,この4種の遺伝子はオペロンを形成している。この遺伝子のいずれを欠損させてもSPD輸送活性が消失し,4種の蛋白質が輸送活性に必要であることを遺伝学的に証明した。次いで,D蛋白質を均一に精製しそのSPD結合活性を検討したところ,Kd値は3.2μMであった。また,A,B,及びC蛋白質を過剰発現している大腸菌より調製した膜小胞のSPD輸送活性はD蛋白質の添加に完全に依存し,SPD-D蛋白質複合体が輸送の真の基質であることが判明した。A蛋白質はそのアミノ酸配列中にATP結合部位を有し,膜表在性蛋白質であった。F_0,F_1-ATP ase欠損大腸菌にこのオペロンを導入し,エネルギー依存性を検討した。グルコース添加でATPを産生させると輸送活性が認められたが,サクシネート添加で膜電位のみを形成させた場合は輸送活性が認められず,エネルギー源はATPであることが明らかとなった。8-_<a3ido>-〔α-^<32>P〕ATPを用いてphotoattinity labelingを行ったところ,A蛋白質がラベルされた。以上の実験より,A蛋白質がATP結合蛋白質で,D蛋白質が基質結合蛋白質であることが判明した。 (2)酵母の液胞膜に存在するポリアミン輸送系を液胞膜小胞を調製し詳しく解析した。スペルミン(SPM)とSPDのKm値はそれぞれ0.2と0.7mMであった。SPMの輸送は液胞膜に存在するH^+-ATPaseの阻害剤であるbafilomycinAにより阻害された。また,プロトノフォアであるSF6847でも阻害され,ATPaseにより形成されるプロトン駆動力がエネルギー源であることが明らかとなった。SPM輸送はATPだけでなく,GTP,UTP,CTPでも部分的に活性化された。
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