研究概要 |
ヒト血清レクチン(MBP)の各ドメインの構造と機能の関係を調べる目的で,単クロ-ン抗体の作成を行った。Balb/cマウスに,1μg/匹のMBPを2週間おきに5回免疫した。血中抗体価が上昇したところでマウスより脾細胞を摘出し,常法に従い,マウスの骨髄腫細胞(Sp2/0)と融合させた。得られた6種の単クロ-ン抗体はいずれもウエスタンブロットでMBPと反応し,さらにMBPをコラ-ゲナ-ゼ消化して得られる糖認識ドメイン(CRD)を含む領域とも反応した。これらの抗体はまた,MBPとマンナンとの結合を非常に効果的に阻害し,MBPの糖結合部位を認識しているものと思われる。これらの抗体のエピト-プをさらに詳細に検討することにより,MBPの糖認識機構が解明されると期待される。 MBPの補体活性化に関与する部位を同定するために,まず,MBPをコラ-ゲナ-ゼ消化し,N末端からコラ-ゲン様ドメインまでを除いたMBPを調製した。このコラ-ゲナ-ゼ消化物はマンナン結合活性は完全に保持していたが,補体活性化能を消失していた。そこで,CRDよりN末端の領域を4つに分け,それぞれに対応する20アミノ酸残基からなる合成ペプチドを作製し,これらを用いてMBPによる補体活性化反応に対する阻害効果を調べた。その結果,N末端より3番目のペプチドにより著しい阻害がみられた。この位置は,コラ-ゲン様ドメインのほヾ中央に含まれる折れ曲り部分よりも少しC末端側に位置するペプチドにあたり,この部位で,補体成分Clr,Clsの結合とそれに続く,チモ-ゲン型から活性型セリン酵素への変換が起るものと考えられた。
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