研究概要 |
ヒト血清マンナン結合タンパク貭(MBP)は著者らにより初めて血清中に見い出されたレクチン(糖結合タンパク貭)である。最近,補体活性化作用,直接オプソニン作用などを示すことが見い出され,新しい生体防御因子として注目されている。本研究ではこの血清MBPの構造と補体活性化作用に関する研究を行い次のような研究成果をあげた。 1)精製ヒト血清MBPを還元アルキル化した後,リジルエンドペプチダ-ゼ消化1,消化物をHPLCで分画精製したのち,各ペプチドのアミノ酸配列をペプチドシ-ケンサ-にかけ決定した。 2)λgt11に組み込んだヒト肝cDNAライブラリ-よりラット血清MBPcDNAをプロ-ブとしてヒト血清MBPcDNAをクロ-ニングした。得られたクロ-ンの塩基配列をジデオキシ法により決定した。1),2)の結果を総合し,248残基よりなるヒト血清MBPの全一次構造を決定した。 3)ヒト血清MBPの分子構築が補体成分Clqと類似することから本レクチンの補体活性化の機作を検討した結果,リガンド・レクチン結合物に補体成分であるClr,Cls複合体が結合し,ここでClr,Cls分子のセリンプロテア-ゼへの活性化が起り,古典経路を介する補体系の活性化が進行することが明らかとなった。 4)本レクチンの異常動物細胞に対する障害作用を調べた結果,糖鎖生合成阻害剤を用いて細胞表面に高マンノ-ス型糖鎖を多量に発現させた細胞は,血清MBPと反応し,補体依存的細胞障害作用をうけた。 5)血清MBPの補体活性化に関与する部位を同定するため,MBPの各部分構造に対応する合成ペプチドを調製し,MBPによる補体活性化反応の阻害活性を調べたところ,コラ-ゲン様ドメインのC未端側lC Clr・Cls結合部位が存在することが明らかとなった。
|