研究概要 |
前年度に確立した精製蛋白質によるSV40ウイルスのミニ染色体無細胞複製系を用い、ヌクレオソ-ム構造をとったDNAの複製にDNAトポイソメラ-ゼI(topoI)およびII(topoII)かどのように関与しているかを調べた。SV40の裸のDNAをtopoIあるいはtopoIIのどちらか一方を含む反応液中で複製させると、いずれの場合も鋳型の半分の長さのleading鎖(約2,700ヌクレオチド)と100〜300ヌクレオチド(岡崎断片)が作られ、DNA合成は完了した。一方、SV40のミニ染色体をtopoIを含む反応液中で複製させると、岡崎断片と1,800ヌクレオチドを平均とする不均一な長さのleading鎖が合成された。この系にtopoIIを加えた場合、あるいはtopoIIのみを含む反応液では、leading鎖は長くなり、成熟した長さのDNA(2,700ヌクレオチド)のみが合成された。これらの結果は、裸のDNAとヌクレオソ-ム構造をとったDNAの複製ではtopoIIの要求性が異なり、SV40ミニ染色体の複製においてtopoIIは、いわゆるswivelaseとして機能することが示唆された。 一方、SV40ミニ染色体にUV照射したものを鋳型にして、無細胞染色体修復系の構築を試みた。放射標識した基質とATPの存在下、鋳型をHeLa細胞の粗抽出液と反応させ、DNAを抽出後、アガロ-スゲル電気泳動にかけ、オ-トラジオグラフィ-によって修復合成を検出した。反応液中にUV照射しない裸のプラスミドDNAを適当量共存させることにより、UV照射したSV40染色体としなかったものとで10倍以上の放射能取り込みの差が得られた。このUV損傷依存性のDNA合成は、色素性乾皮症(XP)の相補性群A、及びCに属する細胞の抽出液を用いた場合には、HeLa細胞抽出液を用いた場合のそれぞれ1/10,及び1/3程度であり、両者を混合することにより取り込みが回復した。今後、この無細胞系はクロマチンのDNA損傷の修復機構解析に有用である。
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