研究概要 |
脳内自己刺激現象におけるド-パミンとオピオイド物質(エンケファリン)の相互作用について,脳内微小透析法を用いて検索した。実験にはラットを用いた。自己刺激部位は内側前脳束,脳透析部位は側坐核とした。透析液サンプルは,自己刺激行動を遂行する前1時間,遂行中1時間,遂行後2時間の合計4時間に亘って採取した。採取したサンプル中のド-パミンについてはHPLCーECD法,またエンケファリンについては酵素免疫測定法を用いて分析した。その結果,側坐核ド-パミンの細胞外濃度は自己刺激行動に伴って基礎値(遂行前の値)から有意な増大を示し,すでに報告した我々のデ-タと一致していた。しかしながら,側坐核エンケファリンの細胞外濃度値は自己刺激行動遂行前,中,後のいずれにおいても今回用いた酵素免疫測定法では検出不可能であった。そこで,つぎに自己刺激行動に対して促進作用を有することが知られているオピオイドアゴンスト(DAMHG,μーレセプタ-アゴニス)の中脳一辺縁ド-パミンシステムにおよぼす効果について検索した。中脳一辺縁ド-パミンシステムの起始核のある中脳腹側被蓋野とその投射野である側坐核の両部位に脳透析用プロ-ブを植え込んだ。オピエイトアゴニストは透析プロ-ブを通して局所的に投与した。その結果,側坐核ド-パミンの細胞外濃度は腹側被蓋野と側坐核の両投与によっていずれも増加した。しかしながら,ド-パミン代謝物質(DOPACとHVA)は腹側被蓋野の投与により増加,いっぽう側坐核の投与により減少した。以上から,オピオイド物質は中脳一辺縁ド-パミンニュ-ロンに対して,その起始部(中脳腹側被蓋野)と終末部(側坐核)において異なる修飾作用を有することが示唆された。
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