染色体ディセクションによるバンド特異的DNAクロ-ン作成と遺伝医学への応用

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454493
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 新川 詔夫 長崎大学, 医学部, 教授 (00111170)
• 研究分担者: 陣野 吉廣 長崎大学, 医学部, 助手 (20179097)
• キーワード: 染色体 / 顕微切断 / クロ-ニング / DNA / ライブラリ- / 染色体彩色法 / 遺伝子地図 / ゲノム

研究概要

平成2年度研究で行った(1)顕微切断法の改良、(2)塩基配列が未知のDNA増幅PCR法の改良、(3)染色体バンド特異的彩色法の開発と染色体異常同定への応用を受けて、平成3年度は以下の研究を行った。
1.種々の染色体領域DNAライブラリ-の作製とその性格づけ:髪・鼻・指節症候群I型(TRPS I)とII型(TRPSII)の遺伝子座は8q23.3ーq24.11に、Waardenburg症候群(WS)の座位は2q35または2q37.3にある。これらの遺伝子単離の出発点としての、当該領域DNAライブラリ-を染色体顕微切断・マイクロクロ-ニング法を用いて作製した。ライブラリ-中のクロ-ン総数は前者では3万5千、後者では約5万であった。各クロ-ンが当該領域に確実にマップされるのを確認するため、(1)雑種細胞パネルを用いたサザン解析、(2)染色体欠失をもつTRPS患者における欠失分析、(3)各クロ-ンを用いたファ-ジライブラリ-の2次スクリ-ニング、及び(4)ファ-ジクロ-ンをプロ-ブとして用いた蛍光in situ hybridization (FISH)を行った。8q23.3ーq24.11由来クロ-ンはヒト8番染色体を含むヒト・マウス雑種細胞のみでシグナルを検出し、更に一部のクロ-ンはTRPS患者でで1コピ-濃度を示したので、当該切断領域にマップされた。これらのクロ-ンはTRPS患者の診断に有用である。2q33ーqter由来ファ-ジクロ-ンのうち、1個は2q35に他の1個は2q36にマップされた。即ち、これらのクロ-ンはWS遺伝子座の近傍に存在する。
2.顕微切断・マイクロクロ-ニング法の改良:平成2年度で確立した手技を更に改良した。(1)染色体作製時の細胞固定液中から酢酸を完全に除去する方法の開発、(2)PCR法のnested PCRへの変更である。
3.多型を示すマイクロクロ-ンの取得:平成3年度研究で得た2q33ーqter特異的クロ-ンのうち、制限酵素断片長多型を示す2クロ-ンを得た。正常人及び親子伝達の検討から連鎖解析に有用なRFLPを検出した。

研究成果

• [文献書誌] 陣野 吉廣,新川 詔夫: "PCRを用いた染色体特定領域DNAの直接クロ-ニング法ーmicrodissectionーmicrocloning法." 実験医学. 8. 1052-1057 (1990)
• [文献書誌] Jinno Y,Yoshiura K,Niikawa N: "Use of psoralen as extinguisher of contaminated DNA in PCR." Nucleic Acids Research. 18. 6739 (1990)
• [文献書誌] Niikawa N: "Contiguous gene syndromes as multiple anomalies syndromes:Molecular basis and approach to gene cloning." Congenital Anomaly. 30. 317-333 (1990)
• [文献書誌] 新川 詔夫: "隣接遺伝子症候群と逆行遺伝学." 西日本泌尿器科学会雑誌. 52. 265-275 (1990)
• [文献書誌] 塚元 和弘,新川 詔夫: "染色体工学から遺伝子へ:染色体微細切断法と微量クロ-ニング法." 月刊細胞. 23. 21-28 (1991)
• [文献書誌] 陣野 吉廣,新川 詔夫: "染色体切断法を用いた遺伝子解析技術の開発." 代謝(増刊号「癌'91」). 28. 171-177 (1991)
• [文献書誌] Hirota T,et al.: "Microdissection of human chromosomal regions 8q23.3ーq24.11 and 2q33ーqter:Construction of DNA libraries and isolation of their clones." Genomics(1992).(1992)
• [文献書誌] Deng HーX,et al.: "Chromosome bandーspecific painting:Chomosome in situ suppressin hybridization using PCR products from a microdissected chromosome band as a probe pool." Human Genetics(1992).(1992)
• [文献書誌] Jinno Y,et al.: "A simple and efficient amplification method of DNA with unknown sequences and its application to the microdissection/microcloning." Journal of Biochemistry(1992).(1992)
• [文献書誌] 新川 詔夫: "染色体とがん関連遺伝子.「がんのバイオサイエンスI:がん遺伝子と抑制遺伝子」" 東京大学出版会, 143 (1991)