研究概要 |
遺伝的リポ蛋白であるLp(a)に関しては最近種々の点が明らかになってきたが,その生理的及び病態的意義に関してはなお不明の点が多い。 我々は今年度の研究で次の如き成果を得た。 1:Lp(a)の測定法に関する検討 抗アポ(a)抗体がプラスミノゲンとの免疫交差性を示すことが判明して以来,測定系でもこの点について充分な検討を行った。 2:種々の疾患における血清Lp(a)濃度の検討と薬剤の影響。 (1)本年はとくに糖尿病を対象とし,合併症などの面を含めて検討し,網膜症との関連性を指摘した。 (2)高Lp(a)血症に対する種々の薬剤の影響において,トコフェリルニコチネ-トで有意の低下を得ることができ,続けて検討中である。 3:アポ(a)イソ型による表現型分類と,血清Lp(a)濃度及び動脈硬化発症との関連性についての検討. 健常者209名,虚血性心疾患(CAD)群470名でイソ型分画を行った。 (1)健常者における表現型頻度分布は白人における報告と一致した。 (2)CAD群でも対立遺伝子頻度は差を認めなかったが,ダブルバンド表現型が有意に多かった。 (3)各表現型でCAD群の方が血清Lp(a)は高値を示した。 (4)CAD群では狭窄枝数の増加に伴い,血清Lp(a)濃度は上昇し,ダブルバンド表現型の頻度も増加した。 4:食餌摂取後TGリッチリポ蛋白(TRL)とLp(a)の結合についての検討 (1)d<1.006のTRLにLp(a)が結合し,全血清Lp(a)の約10%に達する。その結合はイオン強度を下げることによって分離できた。 (2)分離したLp(a)は超遠心法,電気泳動法,組成分析などにより,正常のLp(a)であることを明らかにした。
|