研究概要 |
昨年度に引続き血清リポ蛋白(a)〔Lp(a)〕に関して研究し,今年度の成果としては次のごときものがある。 1:ラテックス免疫比濁測定法 現在主として用いられている測定法はELISA法であるが,操作が繁雑であるため,大量検体処理及び自動化に適した比濁法を開発し,とくに感度の問題よりリラテックス免疫比濁法を用いたが,凡そ良好な結果が得られた。しかし一部の検体によってELISA法とかけ離れたデ-タが得られ,アポ(a)イン型の見地などより検討中である。 2:Lp(a)表現型と動脈硬化性疾患 表現型頻度分布の検討は多数検体で行う必要があるが,昨年度は例数が少なかったので,今年度例数を増し,結論が得られた。即ち,(1)対立遺伝子頻度は正常群と虚血性心疾患(CAD)群とで変りなかった。(2)ダブルバンド表現型がCAD群で有意に高頻度にみられた。(3)全ての表現型においてCAD群の方が血清Lp(a)は高値を示した。 3:Lp(a)と血液凝固線溶系との関係 凝固線溶系へのLp(a)に関するデ-タはin vitroにおけるものが大部分なので,臨床例において種々のパラメ-タとLp(a)との関係を検討した。その結果,正常群ではLp(a)とPIC値の間に正の相関を認めたが,CAD群ではその相関関係は失なわれ,かえって負の相関傾向を示し,病態との関連から考察した。 4:急性相反応と組織修復に関して Lp(a)が急性相蛋白様の変動を示すことは先に報告したが,その後Lp(a)と線溶系との関連性が報告されたので,血栓溶解療法やILー6などとの関連からの追試と,その変動の意義に関して組織修復及び血管新生の観点から免疫組織学的及びin situ hybridizationを用いて検討中である。
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