研究概要 |
尿中より分子量14kDaの低分子蛋白質を新たに分離精製し,一部アミノ酸配列を決定,モノクロ-ナル抗体の作製を経て,酵素免疫測定法を確立した。アミノ酸配列,既存の抗体との反応性から,著者らの精製した蛋白はurine protein 1と同定された。 1.低分子蛋白の尿からの分離精製,物理化学的性状,一次構造解析 慢性腎不全患者尿を、60%硫安塩析,上清を90%に飽和させたものをConAカラム,ゲル濾過(Sephadex Gー75),抗レチノ-ル結合蛋白抗体結合アフィニティ-カラム,Mono Qのステップから成る精製法で,収率は40%に及ぶ。SDSーPAGEで分子量14kDaの単一バンドとして純度が確認され,更に2ーME処理により7.5kDaの単一バンドとなり,同一分子の二量体構造(homo dimer)であることが示された。更に,精製純品を気相アミノ酸シ-クエンサ-にて分析し,53番目の配列を決定し,この結果、Jacksonらによって慢性腎不全患者尿から精製されたUP1とほぼ同一配列であり,しかも,肺の粘膜上皮細胞から産生されるhuman clara cell 10kDa protein (hcc10)とも同一のアミノ酸配列であることが示された。UP1に対するウサギ抗体(DAKO社)に対しても,明瞭な沈降線の形成が,Ouchterlony法により確認された。 2.モノクロ-ナル抗体の作製と酵素免疫測定法の確立 モノクロ-ナル抗体の作製は既に確立された方法による。DAKO社の抗体と著者らの抗体を組合せて,アビジンービオチンシステムによる酵素免疫測定法をほぼ確立している。 今後,基礎免疫学的測面,臨床化学の両面からUP1の研究の更に展開を計る所存である。
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