研究概要 |
平成3年度の研究は平成2年度の研究に引き続いて,慢性腎不全患者尿から,低分子蛋白を分離精製し,モノクロ-ナル抗体を作成し,更にこの抗体を用いて簡便で回収効率,精製度の高い方法を新たに確立した。次に,精製純品の一次アミノ酸配列の解析を行った。病態検査上の意義の解明を行う第1歩として,酵素免疫測定法を確立,生体内体液動態分布の検索を進め,新しい知見が得られて来ている。以下に研究成果の概要を示す。 1)慢性腎不全患者尿からの分離精製と部分一次アミノ酸配列の決定 平成2年度に得られた精製品に対するモノクロ-ナル抗体を作製して(IgGlーk型),この抗体を用いてアフィニティ-クロマトグラフィ-を,陰イオン交換カラム,逆相カラムを組合せて回収率60.2%の精製品を得た。自動解析装置による一次構造の解析はN末端から53残基まで決定し,Jacksanらが報告したprotein1,singh5の肺clara cell分泌蛋白と同一構造を有することが明らかとなった。protein1についてはDAKO社の家兎抗体が発売されており,精製品とこの抗体との反応性と物理化学的性状の一致から,本精製物質はprotoin1と同一物質であることが判明した。 2)酵素免液法の確立 精製純品を標準物質として自家性モノクロ-ナル抗体,家兎抗体を用いて,サンドイッチ法の測定系を確立した。測定範囲は50〜5000ng/ml,精度,再現性も満足出来る結果を得た。 3)生体内分布に関する検索 これまでの検索では,学童期を除き尿中濃度には男女差があること,Lーアルギニン負荷テストから,本蛋白は少くとも近位尿細管で男化再吸収されていることが明らかにされている。
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