研究概要 |
ラットBNPおよびヒトBNPに特異的な高感度ラジオイムノアッセイ(RIA)法を用いて、ラットおよびヒト心房組織中より内在性BNPを単離構造決定すると共に、心臓におけるBNPのプロセシング過程(内在性分子型)および血中循環型BNPの分子型について検討した。その結果、 (1)ラット心臓では、心房,心室中共にANPは高分子量型のγーANPとしてのみ存在するのに対して、BNPはγーBNPとBNPー45の2分子型で存在した。心房中ではBNPー45が主成分であるのに対し、心室中ではγーBNPが主成分であった。また、ラットBNPは血中ではBNPー45として存在することが明らかとなった。 (2)ヒト心臓(剖検時の心臓)でも、BNPはγーBNPとBNPー32の2分子型で存在し、心房中ではBNPー32,心室中ではγーBNPが主要分子型であった。しかし、血中では、ラットの場合とは異なり、BNPはγーBNPとBNPー32の2分子型で存在し、高分子型のγーBNPを主成分とすることが明らかとなった。これは、ANPが血中では低分子型のαーANPとしてのみ存在することを考えると非常に特徴的である。ヒト血中におけるγーBNPの同定は、BNPの生理的意義を考える上で重要であり、今後病態との関連などについてさらに詳細検討が必要であると思われる。 以上の結果は、ラットおよびヒトにおいてANPとBNPが異なる生合成,プロセシングおよび分泌機構による調節を受けることを反映したものと考えられる。 ANPおよびBNPのプロセシング酵素については、現在心房顆粒の大量調整,ANPまたはBNPに特異的なプロセシング活性測定法の確立,非特異的プロテア-ゼ活性に対する種々のインヒビタ-の検討,酵素の安定性など、精製を進める上での基礎的検討を行っている。
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