研究概要 |
平成2年度の研究で、BNPは種差による著しい前駆体構造の相違および特徴的なmRNA構造を反映して、ANPとは異なる生合成,プロセシングおよび分泌機構による調節を受けていることを明らかにした。 一方、本研究と並行して進めていた脳内生理活性ペプチドの検索研究において、平成2年度にブタ脳抽出物より22残基のアミノ酸よりなる新しいNa利尿ペプチドを単離.構造決定し、これが第3のNa利尿ペプチド;Cー型Na利尿ペプチド(CNPー22)であることを明らかにした。また続いてCNPー53の単離同定,cDNA解析によるブタ,ラットおよびヒトCNP前駆体構造解析にも成功し、哺乳類におけるNa利尿ペプチドファミリ-がこれまでのANP,BNPにCNPを加えた3種のペプチドにより構成されることを明らかにした。 そこで本年度は、Na利尿ペプチドファミリ-全体のプロセシングを明らかにすることを目的とし、第3のNa利尿ペプチドであるCNPの体内分布と内在性分子型についてRIA法により検討し、以下の結果を得た。 (1)CNPは脳内各部位に広く分布するが、ブタ脳内では0.79pmo1/gでANPの0.06pmo1/g,BNPの0.52pmol/gを上回り3種のNa利尿ペプチド中で最も高濃度であった。ヒトにおいても視床下部,橋ー延髄などでCNP濃度は1.04pmo1/gでANPの27倍,BNPの69倍と高濃度であった。 (2)一方、未梢組織については、副腎髄質(ブタ)に0.70pmo1/g検出された以外は心臓を含む他のいずれにも検出されなかった。 (3)中枢神経組織の各部分における内在性分子型について分析したところ、いずれの部位でもブタ,ヒト共にCNPー22とCNPー53の2種の分子型で存在するが、CNPー53の方が5〜10倍多いことが明らかとなった。 以上の結果、ANP,BNPが主に未梢で循環ホルモンとして働くのに対し、CNPは中枢神経系でのみ作動するNa利尿ペプチドで、その発現およびプロセシング機序もANP,BNPと大きく異なるものと考えられる。
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