研究概要 |
インスリン依存性糖尿病(IDDM)は自己免疫機序により膵B細胞が破壊され発症するものと考えられており、特定のHLA抗原との関連が報告されてきた。近年、遺伝子レベルでの解析によりHLAーDQ抗原、特にDQβ鎖57位(非アスパラギン酸)がIDDM発症感受性に密接に関与することが白人において指摘された。しかしながら、日本人IDDMではDQβ鎖57位はアスパラギン酸であるものが多く、白人とは異なっている。本研究では日本人IDDMの感受性部位を明らかにするため、HLAクラス抗原(DRβ、DQα、DQβ)の遺伝子解析を行った。 99例のIDDM患者、86例の対照者について検討し以下の結果を得た(有意な所見のみを述べる)。(1)HLAーDR抗原に関しては、DR4,DR9との正相関とDR2,DRw11との負相関を認めた。(2)DR4のサブタイプでは、Dw15との正相関、Dw13、DwKT2との負相関を認めた。(3)DQα(DQA1)に関しては、A3(*0301)との正相関、A1,A4との負相関を認めた。(4)DQβ(DQB1)に関しては、B4(*0401,0402),B3.3(*0303)との正相関、B1.2(*0602),B1.12(*0601)、B3.1(*0301)との負相関を認めた。これらのalleleはいずれもDQβ57位はAspである。(5)ハプロタイプでは、DR4(Dw15)ーDQw4,DR9ーDQw9、DRw8ーDQw8との正相関、DR2ーDQw6,DRw11ーDQw7との負相関を認めた。興味深いことに、DQβ57位がnonーAsp(アラニン)であるDR4(Dw13,DwKT2)ーDQw8はIDDM群で減少していた。(6)genotypeでは、[DR4(Dw15)ーDQw4]/[DRw8ーDQw8]の相対危険率がもっとも高かった(RR14.0)。 以上から、日本人IDDMの発症にはDRβ、DQα、DQβの三者が関与しており、HLAの著明な人種差により日本人IDDMの臨床的特徴(発症率が低い、緩徐発症が多い)が生じていることが示唆された。
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