研究概要 |
〈目的〉バセドウ病眼症はその病因が今だ明らかにされていない病態である。その実態に関しても形態学的に外眼筋などの眼窩後組織中にリンパ球浸潤があること、酸性ムコ多糖類の蓄積があることが報告されているにすぎない。今回我々は血清由来の成長因子が眼窩後組織の線維芽細胞を刺激し、過剰のヒアルロン酸やプロテオグリカン(PG)を産生することがバセドウ病眼症の原因であるかどうかを検討した。 〈方法〉眼窩骨折の患者から得た組織片から線維芽細胞を培養し、細胞数が増加して培養が停止したところで10%ウシ胎児血清を除去して0.1%BSAに変え、72時間IGFー1、PDGFとインキュベ-トし、最後の24時間 ^<35>SO_4を加えて培養した。4M GdHcl bufferによりPGを抽出、QーSepharose columnに吸着させて0.15〜1.5M Naclで溶出、PGを精製して取り込まれた ^<35>SO_4測定した。PGの種類はchondroitinase AC,ABC,NO_2による処理で、大きさはsuperose 6 columnで調べた。 〈成績〉(1)眼窩後組織から得た線維芽細胞は皮膚線維芽細胞と異なり、glycosaminoglycan chainはコンドロイチン硫酸であり、サイズの大きいPGとサイズの小さいPGを合成する。(2)IGFー1は主として小さいPGを、PDGFはサイズの大きいPGの合成を選択的に刺激する。(3)従ってバセドウ病眼症の成因は種々の原因によって産生される成長因子(PDGFは局所の炎症によっても血小板から放出される)により線維芽細胞が刺激され、線維芽細胞の形成する大きなPGが増加し、眼窩内容積を占めることにより眼球突出をはじめとするバセドウ病眼症を生ずるものと思われる。
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