バセドウ病の合併症として古くから眼球突出症と限局性粘液水腫が知られている。しかしこの病変の成立機序は長く解明されないできた。我々はここにこの二つの病変の成立にはヒアルロン酸(HA)やプロテオグリカン(PG)の代謝の異常があることを初めて証明することができた。1)バセドウ病限局性粘液水腫の成因の解明:この病変部皮膚にHA、PGが存在することを我々はすでに明らかにした。皮膚線維芽細胞がこのPG過産生の責任細胞で、皮膚線維芽細胞を刺激してPGを産生する原因となるのがバセドウ病患者IgGであるかどうかを確かめるため、正常皮膚線維芽細胞を培養し、これに正常IgG、バセドウ病IgG、限局性粘液水腫を伴うバセドウ病IgG、眼球突出症IgGを添加して48時間培養し、最後の24時間^<35>SO_4と培養し、^<35>SO_4のPGへのとりこみを調べたところ、限局性粘液水腫を伴うバセドウ病と眼球突出症IgGで^<35>SO_4が特異的にPGにとりこまれ、これはグリコサミノグリカン鎖のサイズの延長やoversulfationでなく、PGのdegradationも変わらないことから、PGの合成の増加であることが明らかにされた。2)悪性眼球突出症では眼窩後組織に細胞浸潤と間質の増加が著しい外傷患者から得た眼窩後組織線維芽細胞のHA、PGの合成を調べると、皮膚線維芽細胞よりも眼窩後組織線維芽細胞の方が約4倍これらの産生量が多い。IGF-1、PDGF、IL-1、TGF-βと眼窩後組織線維芽細胞を培養すると、コンドロイチン硫酸をグリコサミノグリカンの主成分とする小さなPGと大きなPGを合成していることがわかった。IL-1やIGF-1はこのうち小さなPGを、PDGFやTGF-βは大きなPGを合成していることが明らかとなった。炎症性細胞の浸潤によりこれらのサイトカインが分泌され、線維芽細胞がPGを大量に合成分泌し、眼窩容積を増大し眼球突出をつくるものと思われる。
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