研究概要 |
血小板と動脈硬化のかかわりを調べるために、血小板と血中リポ蛋白の相互作用に焦点をあわせた。 1.<lowーdensity lipoprotein (LDL)の血小板機能に及ぼす影響>___ー:LDLは正常ヒト血小板にKd=58nM,1750/celllsの親和性で結合する。血小板LDL receptorへのLDL結合は、Ca^<2+>ーdependencyがなく、HDLで置換された。LDLは単独で一過性の細胞内Ca^<2+>上昇と形態変化を引き起こすが、TXB_2合成やリン酸化反応はおこさなかった。LDLは、Kd付近の濃度でthrombinやcollagenによる血小板凝集を増強させた(ACTA Haematol Jap.,1990)。 今後、LDLの唯一のアポ蛋白であるapoBがmembraneーassociated signal generating enzymeの活性化に如何にかかわるかを追求していく。また、ECーmodified LDLなどの変性LDLの血小板への影響についても検討する予定である。 2.<highーdensity lipoprotein (HDL)の血小板機能に及ぼす影響>___ー:apoE含量の多いHDL_2は少ないHDL_3に比べて、血小板凝集抑制が強い。このことは、apoEがHDLのもつ血小板凝集抑制作用に深くかかわっていることが示唆された。heparinカラムを用いて得たapoEーrich HDLやCETP欠損症患者より得たapoEーrich HDLも有意に抑制作用を示した。apoEとリン脂質よりなるリポソ-ム(apoE・DMPC)はdoseーdependentに凝集を抑制し、thrombinによる細胞内Ca^<2+>上昇も抑制した。apoE・DMPCは血小板膜よりcholesterolを遊離させる効果も示され、膜のcholesterol含有量の低下が機能抑制の一因と思われた(FEBS lett.,1991)。
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