研究概要 |
【1】lowーdensity lipoprotein(LDL)および変性LDLの血小板機能に及ぼす影響:変性LDLは,内皮修飾LDLをモデルとし,ヒト血管内皮細胞とLDLを37℃,24h培養し,その培養上清より回収した。LDLは,血小板にkd=58nM,1750/cellsの親和性で結合するが(ACTA Haematol Japn 1990),変性LDLは,kd=30nM,2500/cellsの親和性で結合した。変性LDLは,血小板凝集,放出,リン酸化反応をdoseーdependentに抑制した。抑制のメカニズムとして,変性LDL中の酸化脂質(例えばリゾレシチン量)の抑制効果があげられた(投稿中)。 【2】highーdensity lipoprotein(HDL)の血小板機能に及ぼす影響およびapoEの血小板機能抑制機序の解明:apoE含量の多いHDL_2は少ないHDL_3に比べて,血小板凝集抑制が強い。apoEーrich HDL,CETP欠損症患者より得たapoEーrich HDLそしてapoEとリン脂質よりなるリポソ-ム(apoE・DMPC)はdoseーdependentに血小板凝集を抑制した。apoE・DMPCは血小板膜よりcholesterolを遊離させると言う興味ある効果も示され,膜のcholesterol含有量の低下が機能抑制の一因と思われた(FEBS lett,1991)。しかし,apoE欠損患者HDLも強力な血小板凝集抑制作用があり,しかも脂質構成は正常人と大きな違いはなかったので,別の要因を考える必要があった(Biochem.Biophys.Res.Commun.1991,in press)。apoEは等電点電気泳動の移動度の違いで主に3つのisoformに分けられる。正常人は普通E3/3型であるが(高脂血症患者ではE2/2型,E3/4型など),このisoformの違いとHDLの抑制作用との間に相関が有るか否かを正常人および患者血清よりHDL fractionを調整して調べた。その結果,E2/2型,E3/4型,E2/2型,にくらべ血小板機能抑制作用が弱いという興味ある結果が得られた(投稿中)。
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