培養血管内皮細胞(HUVE)を使った実験系で、今回以下の事を明らかにし得た。 1)HUVEには従来のthrombomodulin(TM、分子量約10万)の他に、16万前後の高分子のTMが産生される。この従来のTMをType1、この高分子のものをType2を名付けた。Type2はコンドロイチナ-ゼACで処理するとType1と同じ分子量になることから、Type2はType1に余計糖鎖が結合したものであると推定した。 2)HUVEを通常の培養法で培養すると、9:1の割合でType1が多い。 3)しかし、フォルボ-ルエステル、cAMPで刺激すると、TM Type2が発現してくる。その割合は大体4:1位である。 4)このType2の発現したHUVEを、TNF(30U/ml)、ILー1β(30U/ml)をインキュベ-ションすると、先にType2が減少する。 5)F9テラトカルチノ-マは、TMを発現しており、これはcAMP、レチノイン酸で増強される。 6)ヒトのケラチノサイトもTMを発現しているが、これはデスモゾ-ムに局在している。 7)ヒトの粥状動脈硬化巣では、血管内皮細胞のTMは発現が抑制されており、代わりに内皮下組織のマクロファ-ジ、泡沫細胞上にスカベンジャ-受容体、tissue factorが発現している。これは動脈硬化巣局所で血管内皮の抗血栓活性が低下し、逆に血管壁の血栓活性が優位になっていることを示唆するものと考えられる。
|