研究概要 |
マウスあるいはサルにおいて,ヒトrecombinant Interleukinー6(ILー6)の投与により骨髄巨核球の成熟・大型化と血小板増加が惹起されることを以前に報告したが,今後の臨床的応用への可能性を追求するため,いくつかの検討を行ない次の結果を得た。1)ILー6はヒト巨核球に作用し成熟促進因子として働く。すなわち,ILー6はILー3の存在下に巨核球コロニ-形式をSynergisticに促進し,液体培養系においてはplaidy,サイズを指標として観察すると巨核球への成熟促進効果を有することが示された。単一巨核球培養を用いた検討でILー6と巨核球との作用は直接的であることが示された(Eur J Immunol 1990)。2)ILー6をマウスに長期投与(〜30日)し,巨核球・血小板への作用および副作用としての貧血・炎症性蛋白・メサンジウム腎炎の発症などの観察を行った。ILー6は投与期間中を通じて,血小板増加作用を持続して有し,一方腎炎の発症など問題となるような副作用は認めなかった(Blood76,581abstract,Full paper投稿中)。以上1)2)の結果は,ILー6が今後,臨床的に血小板増加因子として応用しうる可能性を示唆するものといえる。3)ILー6の血小板促進効果が持続的であるのに対して、Erythropoietin(Ep)の投与では血小板増加作用は一過性であった。一過性であることの原因として、腺による血小板集積あるいは抗ヒトEp抗体発現の関与は否定的であり、Epの巨核球・血小板への作用は本質的に一過性であると解釈された。4)マウスに炎症メディエ-タ-であるInterleukinー1(ILー1)を投与することにより,反応性血小板増多モデルを作成した。ILー1自体には巨核球刺激作用はないが,ILー1注射后の各種サイトカインをassayしたところ,高濃度のILー6活性を見い出し,“反応性血小板増多"に内因性ILー6が関与する可能性を示した(Blood76,2493,1990)。ILー6が生理的なThrombopoletinであるか否かは明らかではなく,今後の検討が必要である。
|