外来性遺伝子導入法を利用した癌形質発現機構の解析

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454521
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 斎藤 政樹 自治医科大学, 医学部, 教授 (60012762)
• 研究分担者: 古川 雄祐 自治医科大学, 医学部, 助手 (00199431) ; 中村 充 自治医科大学, 医学部, 助手 (20198237) ; 大田 雅嗣 自治医科大学, 医学部, 講師 (90160514) ; 北川 誠一 自治医科大学, 医学部, 助教授 (50133278)
• キーワード: 自律増殖能 / インタ-ロイキン(ILー1,ILー3) / 増殖因子(非)依存性 / シアロ糖脂質 / ガングリオシドGD3 / 造腫瘍性 / 造血因子

研究概要

平成3年度は以下の研究を進めた:1)増殖因子遺伝子導入により増殖因子非依存性となった細胞の表現形質および外来性増殖因子遺伝子の解析:増殖因子(造血因子)ILー3依存性に増殖するマウス骨髄系NFSー60細胞にILー3遺伝子を外来性導入して得られたILー3非依存性細胞株に、自律増殖能獲得と共に、癌関連抗原の一つであるシアロ糖脂質ガングリオシドGD3と想定される糖脂質の発現を見出した。モノクロナ-ル抗体を用いる薄層クロマト免疫染色法でこの抗原の物質的同定を実施し、これに関連したジシアロ糖脂質の新たな分子種発現を見出した。また導入されたILー3遺伝子は、樹立された全てのILー3非依存性細胞株で細胞当たり1コピ-であった。これらの両ガングリオシド分子種はILー3存在下長期培養中に、自然発生した非依存性細胞においても同定された。2)癌特異形質発現とIn Vivoの造腫瘍性増大との連関:ILー3遺伝子導入で得られたILー3非依存性細胞株はヌ-ドマウス移植系で造腫瘍性増大を呈した。この増大現象は、抗GD3抗体の腹腔内投与により部分的に抑制された。更にこの現象が自己産生され得るILー3蛋白量及びガングリオシドの新たな分子種発現と直接的に関連しているかを検索している。3)ILー1依存性ヒト白血病細胞の増殖性と癌形質の発現:本研究者らが樹立したヒト骨髄・単球系細胞株(JOSKs)はインタ-ロイキン1(ILー1)を自己産生し、その増殖動態がILー1に依存している。この白血病細胞のヌ-ドマウスにおける造腫瘍性は、抗ILー1抗体の投与により部分的に抑制された。更に癌関連表面抗原の変化を、シアロ糖脂質の新たな発現に着目して解析しつつある。

研究成果

• [文献書誌] "Nakamuara,M.,Kirito,K.,Yamanoi,J.,Wainai,T.,Nojiri,H.,and Saito.M." Cancer Res.51(7). 1940-1945 (1991)
• [文献書誌] "Akashi,M.,Shaw,G.,Gross,M.,Saito,M.,and Koeffler,H.P." Blood. 78(8). 2005-2012 (1991)
• [文献書誌] "Nakamura,M.,Tsunoda,A.,and Saito,M." Analy.Biochem.198. 154-159 (1991)
• [文献書誌] Leukemia Res.Furukawa,Y.,Ohta,M.,Miura,Y.,and Saito,M.1133-1137 (1991)
• [文献書誌] Blood. Yuo,A.,Kitagawa,S.,Kasahara,T.,Matsushima,K.,Saito.M.,and Takaku,F.2708-2714 (1991)
• [文献書誌] "Naito,M.,Kudo,I.,Nakagawa,Y.,Waku,K.,Nojiri,H.,Saito,M.,and Inoue,K." J.Biochem. 110. 469-471 (1991)
• [文献書誌] "Saito,M.,Nakamura,M.,Kitagawa,S.,Ohta,M.,Gallagher,R.,Nojiri,H.,and Hakomori,S." Raven Press,New York,7(169-175) (1991)
• [文献書誌] 斎藤 政樹,野尻 久雄 がん細胞の分化と分化誘導による制がん: "発がんとがん細胞(がんのバイオサイエンス3) (黒木 登志夫編)" 東京大学出版会, 22(129-150) (1991)