哺乳類受精の分子機構の解明とその外来遺伝子導入技法開発への応用

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454523
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 森 庸厚 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (40012760)
• 研究分担者: 天野 卓 東京農大, 畜産学科, 助教授 (90078147)
• キーワード: 卵子透明帯 / 透明帯中性糖鎖 / 透明帯酸性糖鎖 / 透明帯結合蛋白 / MHCクラスII分子 / CD_4分子 / P56^<lck> キナーゼ / 受精の情報伝達

研究概要

哺乳類の受精は精子と卵子透明帯との相互作用で始まる。透明帯で刺激された精子は先体反応を著起し、透明帯を貫通し、卵黄膜に至る。ここで精子膜と卵黄膜との融合がおこり、精子核の卵子内への移入と雌性前核との核融合により受精が完了する。これらの素過程には体細胞間の相互作用の原型(プロトタイプ)がみとめられることを明らかにしてきた。まずブタ卵子透明帯の糖鎖の構造解析の結果、N-アセチルグルコサミレ残基の露出がかなりの頻度でみとめられ、これが精子上に存在するガラクトース糖転移酵素とレクチン〓の結合様式によって結合し、精子と卵子透明帯との結合を推進していることを示した。
つぎに、先体反応をおこした精子が透明帯中を貫通する際、アクロルンと挙動を共にしながら透明帯と経合する新しい分子(Sp38)を精子より分離、精製し、そのcDNAをクローニングした。そしてこの分子に結合する透明帯側のリガンドとなる90KDaの糖蛋白も分離、精製している。またその他の精子結合性分子と考えられる透明帯硫酸化酸性糖銑の全構造解析も終えている。
精子は透明帯を貫通后、その先体反応后后頭部膜で卵子卵黄膜と接着・融合してゆく。つまり精子の到来を卵子内へ情報伝達する機序の存在が考えられてきた。この機序の一つとしてマウス精子の右頭部膜上にMHCクラスII分子の発現を見い出し、その外素性DNA結合散を立証した。またこのMHCクラスII分子に対応して卵黄膜上のCD4分子の発現と卵黄膜直下でこの分子のP56^<lck>Kinaseが介在することによって受精における情報伝達の複合系を形成していることを発見した。そしてこれらの実在をそれぞれ分子、遺伝子レベルで立証してきた。

研究成果

• [文献書誌] Mori.T et.al.: "Expression of CD_4-like structure on murine egg vitelliue membrane and its signal transductive roles through P56^<lck> in fertilization" Am.J. Reprod Immunol. 26. 97-103 (1991)
• [文献書誌] Mori.T.et.al.: "Expression of the signal transducing regions of CD_4-like and lck genes in murine egg" Biochem.Biophys.Res.Commun. 182. 527-533 (1992)
• [文献書誌] Mori.T.et.al.: "Studies of mammalian implantation in vitro (I)-Production of laminin from human decidual cell line and its effects on murinetrophoblastic outgrow" J.Reorod.Dev.38. 285-292 (1992)
• [文献書誌] Mori.T.et.al.: "Studies of Mammalian implantation in vitro (II)-Effects of cytokiues from mixedlymphocyte reaction on Proliteration of murine tropuoblast cells and establishment of ifs cell liue" J.Reorocl.Dev. 38. 293-301 (1992)
• [文献書誌] Kamada.M.etal.: "Hetes plile autigens in serous cystadenocancinma of the wuman ovary" Asia-Oceania J.Obset.Gynaecal. 18. 387-395 (1992)
• [文献書誌] 森 庸厚他: "生殖・腫瘍免疫と糖鎖" 蚕白質・核酸・酸素(増刊号). 37. 1772-1782 (1992)
• [文献書誌] 森 庸厚.他: "生殖系列-親から子への生命の流れ 第七回「大学と科学」公開シンポジウム構演収録集" 「大学と科学」公開シンポジウム組織委員会(クバプロ), (1993)
• [文献書誌] Mori.T et.al.: "Immunological studies on the mammalian fertilization and implantation in Biology of germ lines-in animals amd men" Japan sci.soc.Press Tokyo, (1993)