研究概要 |
JSR(Jumbled spine and ribs)マウスは、中軸骨格異常を示す系統である。最初の異常個体は系統維持していく過程で偶然発見された。外見上の特徴は、体全体が短縮し、尾も曲度に短縮、屈曲している。骨染色標本の観察において椎骨の形成数の減少に加え、脊柱の湾曲および不規則な癒合などの強度の椎骨形成障害が認められる。私たちは、DNA多型とinterspecific backcrossを組合わせた三点法による染色体マッピングを試みた。三点法による染色体マッピングは、番地まで決定できることと、種々の遺伝子(毛色,形態,免疫,タンパク,DNA)を同一のレベルでマッピングできるという利点がある。とくに最近の遺伝子工学技術の進展により、RFLP法、PCR法等のDNA多型の検出技術が著しく進みつつあり、遺伝子地図はより詳細なものになっている。JSR系統と、岐阜県産野生マウス由来の系統MOL-MIT間で交配を行い、バッククロス群を約150匹作成した。各個体からDNAを抽出し、DNA多型を調べた。その結果、Jsr遺伝子は第5染色体にあることが判明した。すなわち、第5染色体の5つのマーカー遺伝子、9番地のGlur-3(Glutamine receptor-3)、21番地のMit4(PCRマーカー)、30番地のAprt-1(Adenine phosphorybosyl transferase、Afp(alpha-fetoprotein)、Gus(glucronidase)を用いてマッピングしたところ、92番地にJsrを同定した。この位置は第5染色体上中心体から最も遠位に存在することになる。ホメオボックス関連遺伝子であるGsh-2も同位置にマッピングされており、Jsrマウスの原因遺伝子であることが考えられる。そこでアミノ酸配列により類推した塩基配列、26merと17merのプライマーを合成し、PCRでGsh-2遺伝子のクローニングを開始した。この実験は現在継続中である。
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