近年の遺伝子工学技術の進展により、多型検出の技術が著しく進みつつある。制限酵素を用いたRFLP法、ミニサテライトDNAを利用したPCR法でもって疾患マウスの染色体地図(リンケージマップ)はきわめて精密なものになっている。私たちは、それらのDNA多型と日本野生マウス由来系統を用いたinterspecific backcrossを組合わせた三点法による染色体マッピングを行っている。三点法による染色体マッピングは番地まで決定できることと、種々の遺伝子(毛色、形態、免疫、タンパク、DNA)を同一のレベルでマッピングできるという利点がある。3年間の研究成果として、異常リンパ球の増殖、血管炎、糸球体賢炎を自然発症する自己免疫マウスMRL系統の原因遺伝子lprの染色体マッピングに成功した。第19染色体以外の標識遺伝子とは全て否定的なリンケージ結果を得たが、第19染色体の標識遺伝子とのみ有意なリンケージを示した。すなわち、その標識遺伝子として8番地にあるLy-44(lymphocyte antigen-44)と29番地にあるTat(terminal deoxynacleot:dyl transferase)を用いた。Ly-44はBgl11で、TatはBamHIでRFLPが観察された。バッククロス群におけるlpr遺伝子との組換え率を算出したところ、lprとLy-44間は22/116=19%、lprとTdt間は7/116=6%、さらにLy-44とTar間は25/116=22%であった。これらの結果から、lpr遺伝子は第19染色体に存在し、その順序はセントロメア側からLy-44-(19cM)-lpy-(6cM)-Tdtとなり、lpr遺伝子は23番地に位置していることが決定された。この番地にはT-ce11の細胞死を引き起こすFasantigenもマッピングされ、現在その分子レベルでの解明が行われている。
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