本研究は水溶性食物繊維の生理機能と腸内醗酵産物との関係を明らかにする目的で、盲腸切除ラットおよび疑似手術(対照)ラットを作成し、それぞれについて5%セルロ-ス食、5%ペクチン食および5%ポリデキストロ-ス食によって3週間飼育した。 盲腸を切除してしまうと腸内醗酵が影響されて、醗酵生成物の短鎖脂肪酸も減少すると考えられるが、結腸内容物中の短鎖脂肪酸をイオンクロマト法によって測定した。 また、短鎖脂肪酸の濃度と血清コレステロ-ル濃度との関係を知るために血清の総コレステロ-ルおよびHDLーコレステロ-を測定した。 盲腸切除ラットでは回腸あるいは結腸の形態や機能に変化が生じるかどうかについても検討した。 1)ペクチン食の対照群では盲腸内発酵が行なわれているのに対して、盲腸を切除してしまうと、腸内発酵が充分に行われない。一方、ポリデキストロ-ス食では対照群の可溶性糖の利用率および内容物中の有機酸含量が盲腸切除群よりも極度に低く抑えられた。 2)ペクチン食は対照ラットが血清コレステロ-ルを低下させる作用があるのに対して、腸内醗酵が不十分になると(盲腸切除ラット)血清コレステロ-ル値がむしろ上昇した。また、ポリデキストロ-ス食でも腸内醗酵が落制されていると思われる対照ラットにおいて血清コレステロ-ル値の上昇がみられた。これらの結果は、腸内醗酵と血清コレステロ-ル値の低下作用には深い関わりがあることを示唆している。特に結腸内容物中のプロピオン酸濃度と血清コレステロ-ル値との間には負の相関が認められた。 3)盲腸切除の影響は各群ともに、回腸よりも結腸に対して著しい変化がみられた。すなわち、結腸の長さ、湿重量が増加した。水溶性食物繊維のなかでも特にペクチン食群においてその傾向は顕著であった。
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