体力などの生理機能の評価に際しては、スポーツ科学の立場からは最大能力の大小に関心がもたれるが、健康科学の立場からは最大能力よりむしろストレスや刺激に応じて必要な応答を速やかに行なう動的応答性がより重要であると考えられる。このような考えに基づいて、運動の変化に対する循環系およびガス交換系の動的応答特性を評価する方法の開発を目的とした。 自転車エルゴメーターを用いて、強度の最小および最大が10および60%VO_2maxで、周期が1〜16分の正弦波運動を反復行なったときの心拍数およびガス交換パラメーターをbeat-by-beatまたはbreath-by-breathに測定し、その振幅応答ならびに位相応答と運動周期や最大酸素摂取量との関係を検討し、以下の結論を得た。 1振幅応答と運動周期の関係は、指数関数モデルによってよく近似される。その時定数は応答の速さと逆相関関係にあり、時定数が小さいほど機能のinertialityが小さく、速い運動変化にも忠実に追従することができる。また正弦波運動に対する応答の振幅とステップ運動に対する振幅の比と最大酸素摂取量との間に、高い正の相関があり、両者間に密接な関係のあるものと考えられる。 2位相応答と運動周期との関係は、指数関数と一次関数とよりなる複合モデルによってよく近似することができる。その一次関数の係数(直線の勾配)は調節系の閾値と関係があり、係数が小さいほど閾値が小さいことが示唆された。 3上記のinertialityと閾値は循環系およびガス交換系の調節の動特性の指標であり、新しい健康指標として利用し得る可能性が高い考えられる。
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