コフィリンとデストリンは、哺乳類の各組織・細胞に普遍的に存在するアクチン結合蛋白質である。我々は、両蛋白質のcDNAクロ-ニングを行ない、両蛋白質のアミノ酸配列が71%同一であり、互いに近縁の蛋白質であることを明らかにした。その両cDNAを用いることによって、大腸菌内に大量に、しかも正常に機能しうる蛋白質を発現させることに成功した。 大腸菌に発現させたコフィリンとコフィリンのN端領域に対する抗体(新たに作製した)を用いて、コフィリン一次構造上のアクチン結合部位を化学架橋の方法により決定し、Ala^<105>ーMet^<115>の領域であることを明らかにした。次に、この領域を含むドデカペプチド(Trs^<104>ーM2+^<125>)を合成し、この合成ペプチドのアクチンに対する作用を検討したところ、強力なアクチン重合阻害活性を有することが判明し、この領域がコフィリンのアクチン結合部位であることが確立した。この領域のアミノ酸配列は他のアクチン脱重合蛋白質であるデストリンやデパクチンにも保存されており、アクチン脱重合活性のコンセンサス配列であると考えられる。 化学架橋の実験から、コフィリンのこのアクチン結合領域のうち、とくにLys^<112>とLys^<114>がアクチンとの結合に重要であることが示唆されたので、これらのLys残基を、残基に変異させた改変体コフィリンを作製したところ、アクチン結合活性が消失することがわかった。アクチン結合蛋白質のアクチン結合活性に不可欠のアミノ酸残基が特定できたのは初めてである。
|