研究概要 |
コフィリンとデストリンは,低分子性の互いに近縁のアクチン結合蛋白質で,前者はpH依存性の,後者はpH非依存性のFアクチン脱重合活性を有する。前年度までの解析によって,コフィリンのTrp^<104>ーMe+^<115>の領域(デストリンにも保存されている)がアクチン結合部位であることが明らかになっていたが,今年度において,この領域がイノシト-ルリン脂質(PIP_2並びにPIP等)結合部位でもあることが判明した。この領域に相当する合成ドデカペプチドは,アクチン並びにPIP_2及びPIPと強く結合し,結果としてPIP_2ないしPIP感受性のアクチン重合阻害活性を有することがわかった。さらに興味深いことに,このドデカペプチド及びコフィリンが,ホスホリパ-ゼCによるPIP_2の加水分解を強く阻害することがわかった。この結果は,ホスホリリパ-ゼCの各種アイソザイムで共通に得られた。したがって,コフィリンはアクチン系細胞骨格の調節因子としてばかりでなく,イノシト-ルリン脂肪の関与するシグナル伝達系の制御因子として機能する可能性が示唆された。また,ドデカペプチド領域が,このようなコファリンのもつ多機能性を担う領域であることも明らかとなった。 コフィリンcDNAを用いた部位特異的変異の実験から, ^<112>LysがPIP_2並びにPIPの結合に ^<114>Lysがアクチン結合に重要な役割を果たしていることがわかった。 ごく最近の実験で,コフィリン類似蛋白質(〜18K)が出芽酵母にも存在することがわかった。cDNAクロ-ニングを行ない,さらに組み換え体を大腸菌に発現させ,その性質を調べたところ,pH依存性のFーアクチン脱重合活性,PIP_2感受性,Fーアクチン結合活性など哺乳類コフィリンのもつ活性をすべて有していることがわかった。現在,この酵母コフィリンの機能を解析中である。
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