コフィリンがホスホリパーゼCによるPIP_2の加水分解を阻害する活性を有することが明らかになった。以前に同定していたコフィリンのアクチンの結合部位である^<104>Wから^<115>Mまでのドデカペプチド領域に相当する合成ペプチドがアクチンばかりでなくPIP_2とも結合することを示した。その結果として、このドデカペプチドもホスホリパーゼCによるPIP_2の加水分解を阻害する活性を示すことがわかった。コフィリン及びドデカペプチドは、ホスホリパーゼCの種々のアイソザイムに対して、多少の程度の差はあるものの、阻害作用を示すことから、基質のPIP_2に結合することが阻害の原因であることがさらに確認された。以上の結果から、コフィリンは、アクチン結合タンパク質としてばかりでなく、イノシトールリン脂質シグナル伝達系においても機能する可能性が示唆された。 出芽酵母から、DNaseI-アフィニティークロマトグラフィーを用いてコフィリン様蛋白を同定した。部分アミノ酸配列をもとに、遺伝子のクローニングを行った。また、cDNAクローンをもとに大腸菌に組み換え体の蛋白質を発現させ、精製してin vitroでの性質を調べたところ、(i)pHに依存したF-アクチン脱重合性を有する、(ii)G-アクチン及びF-アクチンの双方に結合しうる、(iii)PIP_2と結合する、ことの3点が明らかになった。この性質は哺乳類コフィリンと完全に一致していた。さらに、アミノ酸配列も哺乳類コフィリンと約40%同一であった。以上の結果から、この出芽酵母コフィリン様タンパク質は酵母コフィリンであると結論し、その遺伝子をCOF1と命名した。COF1は、遺伝子破壊の実験から、酵母の生育に必須であることが判明した。今まで、酵母の生育に必須であったアクチン結合タンパク質は報告されておらず、コフィリンが初めてである。
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