研究課題/領域番号 |
02454536
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
後藤 祐児 大阪大学, 理学部, 助教授 (40153770)
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研究分担者 |
手島 圭三 大阪大学, 理学部, 助手 (30155452)
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キーワード | モルテン・グロビュ-ル構造 / 蛋白質の高次構造 / 蛋白質の変性 / 蛋白質の構造形成 / チトクロムc / 合成ポリペプチド / 蛋白質物理化学 / 熱ショック蛋白質 |
研究概要 |
1.蛋白質のモルテン・グロビュ-ル状態の安定性とその機構を明らかにするため、前年度に引き続き、さまざまな程度にアセチル化した修飾チトクロムcを用いて、その熱安定性を調べた。その結果以下の成果を得た。 (1)アセチル化にともない酸性、低イオン強度でのモルテン・グロビュ-ル構造の安定性は高まった。これに対して中性pHでの未変性構造の安定性はアセチル化により低下した。これよりモルテン・グロビュ-ルと未変性構造では、安定化の機構の異なることを示した。 (2)次に未変性構造とモルテン・グロビュ-ル構造の熱安定性を円偏光二色性、視差走査熱量計などを用いて詳細に調べた。そして、未変性構造から高度な変性構造への転移反応に伴う比熱の変化とエンタルビ-変化は共に大きいのに対して、モルテン・グロビュ-ルから高度な変性構造への転移反応の対応する値は小さいことがわかった。これによりシトクロムcのモルテン・グロビュ-ル構造は、相当な量の疎水性残基が溶媒に露出しているという点では高度な変性構造に近い状態であることがわかった。 (3)モルテン・グロビュ-ルと未変性構造の熱力学的パラメ-タをもとにそれらの熱力学的安定性を総合的に検討した。そしてモルテン・グロビュ-ルが直接的には観測されていない生理的条件下においても、モルテン・グロビュ-ルを含めた3状態を仮定した機構が、より一般的な蛋白質の状態転移の機構であることを示した。 2.前年に引き続き、主にリジンとロイシンよりなる両親媒性のモデルペプチドを用いてその構造と物性を調べた。モデルペプチドがモルテン・グロビュ-ル構造を形成すると、リン脂質リポゾ-ムと相互作用を起こし、さらにリポゾ-ムの膜融合を促進することを示した。 3.βラクタマ-ゼとその基質であるナフシリンスルフォンはアルカリpHにおいてアシル中間体を蓄積し、その結果酵素は不活性化される。このアシル中間体はモルテン・グロビュ-ルに近い構造であることが示唆されている。アシル中間体はpHを中性にすると活性のある酵素に再生する。熱ショック蛋白質とモルテン・グロビュ-ル構造との相互作用の有無を明らかにするため、GroE、Hsc70などの熱ショック蛋白質とβラクタマ-ゼのアシル中間体との相互作用を調べた。アシル中間体から活性のある酵素への再生はこれらの熱ショック蛋白質が存在すると促進された。この結果はモルテン・グロビュ-ルと熱ショック蛋白質の相互作用を示唆した。
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