研究概要 |
当該年度の研究実績は以下のようである。 1.NRKの変異種(39ー1,39ー3)の解析から以下の知見が得られた。 (1)PDGFによる癌化はEGFによるシグナル伝達経路を升して起こる。(2)EGFのシグナル伝達経路において,EGFによる増殖反応はtranoformationのための経路とは分岐している。(3)NRK細胞において殆んどの癌遺伝子の作用点はEGFシグナル伝達経路上にあり,<ras>___ー,<mos>___ー,<fos>___ー,SV40の作用点はsrcより上流,たぶん細胞膜にある。(4)39ー1はsrc,fyn,yesなどによって変異を相補されるのでこれら近傍の変異であろう。(5)39ー3は<raf>___ーによってのみ相補され,幾つかの証拠からもっと下流の変異であると予想される。(6)他に幾つかの変異種を樹立し,解析している。 2.分裂酵母の細胞周期変異種を宿主とした機能相補クロ-ニング。 (1)野島らはcdc2変異種よりcdc2^+相同遺伝子のみならず未知のヒトcDNA(2B145)をクロ-ン化した。またcdc13変異種より13B26と13B68の2種のヒトcDNAクロ-ン化した。興味あることに13B26と2B145は塩基(アミノ酸)配列上酷似しており,共にcdc2とcdc13両変異種の機能を相補する。13B68はcdc2,cdc13,pat1の3種の変異種を共に機能相補したことはさらに驚くべき発見であった。(2)永田らはcdc25^+相同なヒトcDNAと,weo1^+相同なヒトのcDNAのクロ-ン化に成功した。これらの発現の癌化との関連で興味ある知見が得られ現在解析中である。(3)岡崎らは分裂酵母を病主として機能相補クロ-ニング法を確立した。またpat1変異種を宿主として数種のS.pombe cDNAおよびヒトcDNAをクロ-ン化した。このうちヒトcDNA(PH401,PH231)はcdc2変異種をも機能相補するものの上述の13B68とは塩基,アミノ酸配列上も全く類似性が無く,これらの細胞周期制御における生理的意義について,現在解析中である。
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