研究概要 |
(1)NRKの変異株などの解析により得た新しい知見 (1a)NRK細胞は足場を失うとG1期に停止するが増殖因子の添加で足場の無い状態でも同調的に増殖を開始した。G1期からS期までの時間経過は足場のある状態のものとほぼ一致した。EGF単独では非同調的に小数の細胞が反応するだけであった。癌化能を持たない39ー1,39ー3両変異株は増殖因子の存在下でもG1期に停止し,ともに足場の無い状態ではEGFとTGFーβに反応しなかった。このようにNRKは足場の無い状態でも癌化のシグナルに反応して足場のある時とほぼ同様に増殖を再開する能力があることが示された。(1b)cーrafー1に対するアンチセンスを導入してRafー1蛋白発現が著しく抑えられたNRK細胞を作成し増殖因子および種々の癌遺伝子による癌化に対する感受性を調べたところEGF+TGFーβ,PDGF+TGFーβ,vーfms,vーerbβ,vーras,vーmos,PyMT,vーsrc,SV40による癌化に対して非感受性を示したのに対してadenoE1Aに対しては感受性を示した。これらの結果はRafー1が前者の癌遺伝子の作用点の下流で癌化シグナル伝達に重要な役割を果たしていることを示唆するとともにadenoE1Aがrafの下流にその作用点を持つか別の癌化シグナル伝達経路上にあることを示唆している。 (2)分裂酵母の細胞同期変異株を宿主とした機能相補クロ-ニング (2a)野島らは13β26と2β145の塩基配列を決定した結果、両者ともN末端近くに2つのRNA結合蛋白質に共通をモチ-フを持つことを見い出した。13β68は未知の蛋白だが核マトリックス蛋白(マトリン)と共通のモチ-フをその中央部に持つことが分った。(2b)岡崎らはpat1変異株を機能相補するpat1以外の分裂酵母遺伝子を数多く単離したが、興味深いことにそのうちのひとつPP85はcdc10をも強く相補し、アミノ酸配列も2つのcdc10モチ-フを持つという点でcdc10類似であった。
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