研究概要 |
ヒト肝細胞増殖因子(hHGF)は,初代培養肝細胞の増殖を促進する蛋白性因子であり,その分子内に特徴的なドメイン構造を有する。すなわちHeavy chain(H鎖)に4個のクリングル構造をもち,light chain(L鎖)がセリンプロテア-ゼと高い相同性を示す.これらのドメイン構造が,hHGFの肝細胞増殖促進作用においてどの様に機能するかを明らかにすることを目的として、hHGFの構造変換体を作成し解析を行なった. クロ-ン化されているhHGFのcDNAを<in>___ー <vitro>___ー siteーdirected mutagenesisにより組換え,4個のクリングル構造のそれぞれを欠損した組換え体およびL鎖を欠損したH鎖のみからなる組換え体を作成した.組換えたそれぞれのDNAをCos細胞で発現するベクタ-(pcDLーSRα296)に組込んだ後,Cos細胞に導入した.それぞれのCos細胞の培養上清での蛋白の生成につき,ウエスタンブロッティング法で調べたところ,生成量に差はあるものの構造変換された蛋白がすべて生成していることが明らかになった.現在これらのhHGF構造変換体について,肝細胞増殖促進作用を詳細に検討しているが,N末端に存在するクリングル構造を欠損すると活性が完全に失われることが明らかになっている.したがってこのクリングル構造は活性に必須であると考えられる. すでにcDNAクロ-ニングによりN末端から2番目のクリングル構造までをもち3番目と4番目のクリングル構造およびL鎖を欠損するhHGFの変異体をコ-ドするcDNAクロ-ンが得られている.そこでこのcDNAについても発現ベクタ-に組込み,Cos細胞で発現させ,その活性を調べたところ,この変異体は肝細胞増殖促進作用を示さなかった.したがってN末端から2番目のクリングルまでの構造以外のドメイン構造も活性に必要であると考えられる.
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