研究概要 |
本年度は、アクチビン結合タンパク質の生理的役割の解明とアクチビン受容体の構造解析を重点的に推進して、次のような成果を挙げ得た。 (1)アクチビンーBの単離とその性質の検討: アクチビンはサブユニットの組み合わせにより,A,AB及びBの3種類の異性体が存在し得るが、これまで前二者のみが単離され,アクチビンーBは未だ自然界から得られていない。我々は,ブタ卵胞液中では,アクチビンとその結合タンパク質であるホリスタチンとがほぼ等モルづつ結合して複合体を形成して存在していることを見いだした。精製した複合体をさらに逆相HPLCにより分析した結果,複合体は各成分,ホリスタチン及びアクチビンーA,ーABーBに解離してカラムから溶出した。こうして初めて単離されたアクチビンーBの種々の生物活性を測定したところ,FSH分泌促進作用,前赤芽球系細エ分化誘導能,卵巣顆粒膜細胞分化促進能いずれもアクチビンーA及びーABの10ー20%程度の活性しか検出されなかった。しかし,カエル初期胚での中胚葉誘導能は非常に強く、他のアクチビンと同程度であった。これらの結果は、アクチビンーBは初期胚のようなある特定の時期あるいは特定の場所でのみ機能し得ることを示唆している。 (2)アクチビン受容体の単離とその性質の検討: これまでに,白血病細胞株からのアクチビン受容体の単離に成功しているが,本年度はさらに高受容体発現株マウスEC細胞Pー19株からの精製を試みた。大量(130l)の培養細胞からアフィニティ-クロマトグラフィ-により約20pmolの受容体タンパクを単離した。本タンパクのN末配列分析の結果,発現ベクタ-を用いるクロ-ニング法により,最近明らかにされたマウス3T3細胞のアクチビン受容体のそれと同一であることが判明した。精製受容体は,アクチビンーA,ーAB,ーBに対して同じ親和性を示したが、構造類縁体のインヒビンやTGFーβとは殆んど反応性を示さなかった。
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