研究概要 |
研究代表者は,大腸菌のプロリンおよびグルタミン酸輸送が二次性能動輸送機構によって駆動されることを解明し,それぞれの反応がプロリン輸送蛋白(putP)およびグルタミン輸送蛋白(gltSおよびgltP)によって触媒されることを検証してきた。本研究は上記の輸送蛋白の反応機構を確定すること,および,反応中心の分子構築を解明することを目的とし,以下に述べる成果を得た。1)プロリン/Na^+-シンポ-ト機構:ΔμNa^+に依存し,pHによって調節されるプロリン輸送反応を詳細に解析し,プロリンとNa^+の等方共役輸送に関する速度論モデルを提案し,検証した。 2)プロリン輸送蛋白の反応中心の分子構築: 等方共役輸送過程に変異を生じた変異輸送蛋白の変異部分の決定,ならびに,NEM感受性CysをSer置換した変異輸送蛋白の反応特性を解析し,反応中心の分子構築をおおむね以下のように推定した。(i)Cysー281(ヘリクスVII)およびCysー344(ヘリクスVIII)はプロリン/Na^+の結合に関与している。(ii)Glyー22およびCysー141(それぞれヘリクスIおよびIIIに存在),Argー257(ル-プVI〜VIIに存在)はNa^+の結合/共役輸送に関与している。(iii)gltSの塩基配列の決定とputPとの相同性検索の結果,基質/Na^+シンポ-タ-におけるNa^+-結合モチ-フの存在が示唆された。このモチ-フはGlyー328(ヘリクスIX),Alaー366(ル-プVIII〜IX),Leuー371,Glyー375,Argー376(ヘリクスIX)より構成され,Cysー344をとりまくクラスタ-を形成している。このことは上記5本の膜貫通ヘリクスが特異的なヘリクス相互作用を介して,活性中心の空間構造を構築していることを示唆する。 3)基質Na^+シンポ-タ-の生理機能と普遍的分布:上記の新知見および従来の諸研究の成果をとりまとめ,標記に関する総説を書き下ろし,出版した。
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