研究概要 |
バクテリアのトランスポゾンTn3は、トランスポゼ-スをコ-ドし,自分自身の転移を促す。トランスポゼ-スの構造と、Tn3 DNA転移反応に於けるトランスポゼ-スの塩基配列の認識の機構を明らかにすることを目的として行った平成2年度の研究成果は次の通りである。 (1)トランスポゼ-スの特異的、非特異的DNA結合に関与するドメインの解析。トランスポゼ-スはその両端にあるIR DNAに特異的に、又DNA一般に非特異的にも結合するという二つの活性を併せ持つので、そのドメインを解析するためにトランスポゼ-ス遺伝子(tnpA)を、三つのセグメントに分け、各々、または隣会う二つずつの領域を切り出し、lacZ遺伝子につなげ、生じる融合タンパク質をβーガラクトシダ-ゼのアフィニティ-・カラムにより精製することが出来た。現在精製した各融合タンパク質のDNA結合活性を解析中である。(2)Tn3 DNAの両端にある逆向き配列(IR、38塩基対)のトランスポゼ-スとの結合部位及び非結合部位の機能の解析。異なる変異を持つ種々のIR DNAを、Tn3の右端と左端に導入し、両端に同じIR変異体または異なる変異体を持つ種々のTn3の誘導体を作製し、それらのラムダ・ファ-ジへの転移活性を調べたところ、同種の変異を両端に持つTn3の誘導体は転移能が下がることが分かった。IRにはトランスポゼ-スの結合する領域(B)と結合しない領域(A)が存在するが、上記の結果はこれらの二つの領域が転移に必須であることを示している。現在他のTn3の誘導体の転移活性を調べている。AとB領域が機能的に違えば、それぞれに異なる変異を導入した場合、そのようなTn3の転移能は回復されると予想している。 IR内の領域Aは、宿主タンパク質の結合部位と考えられるが、実際に宿主タンパク質の中に、ゲル電気泳動法でIR DNAをシフトさせるものがあることを発見した。現在このタンパク質の同定を行っている。
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