研究概要 |
ユリ花粉母細胞の減数分裂前期に対合する相同染色体間に形成され、遺伝子組換えを可能にするシナプトネマ構造(S.C.)を量的に単離した。S.C.の形成に伴いトポイソメラ-ゼIの活性が上昇し,遺伝子組換えが終了したと思われる時(厚糸期末)から活性が減少する。DNAトポイソメラ-ゼIの活性は単離精製されたS.C.上にも存在し、DNA組換えの場と考えられている組換え節(S.C.上に出現するDNA蛋白の複合体)に局在することも予想される。DNA組換えの中間体と考えられているホリディ構造を解離させるResolvaseも単離されたS.C.分画に存在することが明らかになった。さらにDNA組換えに関与する蛋白(Recombinase,ATPー依存型ストランドトランスファレ-ス、ATPー非依存型ストランドトランスファレ-ス、T_4geneー32蛋白類似のRー蛋白など)やDNAの修複に関与する蛋白の分布とS.C.の関連が明らかにされつつある。RecombinaseとResolvaseのアミノ酸配列決定は末端ブロックのため進行が大きく遅れた。断片化した後の解析から塩基配列を予測し遺伝子を釣り上げる事、ユリ花粉母細胞の減数分裂特異的に発現する遺伝子群の中から部分アミノ酸配列を基に探索する方法を実行している。ユリ花粉母細胞の減数第一分裂前期(相同染色体対合と遺伝子組換えの越こる時期)に発現しているpolyA^+RNA_bよりcDNAクロ-ンを17ケ得、全塩基配列を決定し、ホモロジ-サ-チを完了した。類似性のあるものとしてRAD57,Hsp70,小型Hsp蛋白があったが、他は新しいものであった。減数分裂特異的遺伝子発現には、減数分裂特異的プロモ-タ-の存在が必要である例を示した。マ-カ-遺伝子としてGUSを用い、その上流に35Sプロモ-タ-または酵母のmei2プロモ-タ-をつけて細胞に導入すると、mei2プロモ-タ-をもつものだけが減数分裂細胞内でGUSを発現した。以上のデ-タは染色体対合と組換えの理解に貢献する。
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