研究概要 |
昨年度の研究において、PCR反応を利用したrho遺伝子への変異導入法および発現ベクタ-を用いた選択法が確立されたので、本年度はそれらを活用して実際に多数の変異rhoを分離し詳細な解析を進めた。 1.rho蛋白C末端ドメインの変異解析:rhoの一次構造上、C末端領域の機能に関する情報が最も不足していることから、まずこの領域を標的とする変異ライブラリ-を作成した。そこから、現在までに約50個の変異株を分離し、さらにそのうち20個についてDNA塩基配列決定を行った。その結果、推定アミノ酸置換部位は調べたC末端100残基中で320ー360番目の間に集中する傾向がみられ、この部分が機能的に特に重要な位置を占めることが明らかになった。 2.変異rho蛋白の精製と機能解析:上で分離された変異rhoのうちから、特に高レベルの過剰発現を示すE34GとA357Vを選んで精製し、in vitroの機能解析を行った。両者とも転写終結活性を殆ど完全に失っていたが、RNA結合活性とATPase活性に関して対照的な変化を示した。即ち、E342Gはシトシン以外のRNA塩基に対する親和性は低下しているがATPase活性を基本的に保持しているのに対し,A357Vは全くその逆であった。従来、RNA結合能とATP結合能はN末端ドメインと中央部ドメインにそれぞれ局在するとされていたが、この結果からC末端ドメインもそれらの機能に大きく且つ多様な影響をおよぼすことが明らかになった。従って、C末端ドメインはN末端・中央部ドメインの両方と相互作用し、それらのRNA結合とATPase活性を共役させる役割を担うものと考えられる。現在、他のドメインについても同様の解析を進めており、それらの結果を総合することにより、rhoの作用機構をさらに掘り下げていく予定である。
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