研究概要 |
フィトクロムは緑色植物に存在する色素蛋白質で、赤色光吸収型Prから近赤外光吸収型Pfrに光変換する事によって様々な生理調節反応を行うが、その光情報変換機構は未知である。申請者等は、シンクロトロン放射光を光源としたX線小角散乱法を用いて高次構造の解析を行ない、その二重体構造の低分解能モデルを提出した(Tokutomi et al.,1989,Nakasako et al,1990)。さらに同モデルを応用して偏光受容の分子機構が解釈できる事を示した(Tokutomi&Mimuro,1989)。さらに詳細な分子構造の解明を目指して本研究で結晶解析による研究を始めた。 平成2年度はフィトクロムの結晶化を目指して以下の実験を行ったが、結晶解析に供する事のできる単結晶の作製には今の所成功していない。(1)大量の純品精製システムを確立させたlargeフィトクロム(エンドウ黄化芽生えからPr型のまま抽出精製を行い、内在性の蛋白質分解酵素による部分加水分解を受け、Nー末端側の6kDaのポリペプチドを欠落した分子量114kDaのサブユニットからなる二重体)のPr型の標品について、4種類の異なる沈殿剤を使用して結晶化の条件を調べた。硫酸アンモニュウムを用いて、偏光顕微鏡による観測で部分的に配向の見られる500um程度の塊を幾つか得たが、単結晶は得られていない。(2)現在largeフィトクロムの結晶化条件を追及するのと平行して、smallフィトクロムを調製して(largeフィトクロムのトリプシン加水分解物から精製した、Nー末端側の59kDaの発色団含有領域に対応するフラグメントで、溶液中で単量体として存在する)に関する結晶化条件の追及を行っている。(3)以上の他に将来結晶解析を行う際に必要となってくる、発色団の分子内構造と分子内配向に関する研究を行い、その三次元モデルを組み立て、1991年3月の植物生理学会年会で発表予定である(Tokutomi&Mimuro,Photochem.Photobiol.投稿中)。
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