カテコ-ル体二原子酸素添加酵素の構造・機能・生理的役割に関する比較生化学的研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454565
• 研究機関: 滋賀医科大学
• 研究代表者: 野崎 光洋 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00025545)
• 研究分担者: 石田 哲夫 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10176191) ; 中井 智恵子 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (30111892) ; 堀池 喜八郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (80089870)
• キーワード: 酸素添加酵素 / カテコ-ル1,2-二原子酸素添加酵素 / カテコ-ル2,3-二原子酸素添加酵素 / 非ヘム鉄酵素 / アミノ酸配列 / 塩基配列 / oーニトロフェノ-ル / 電荷移動複合体

研究概要

カテコ-ルを分解する酸素添加酵素には、水酸基の間を開裂するカテコ-ル1,2-二原子酸素添加酵素(Intradiol型)と水酸基の隣を開裂するカテコ-ル2,3-二原子酸素添加酵素(extradiol型)とがある。後者については既にDNA塩基配列を決定しているので、前者についてもDNA塩基配列の決定に着手し、両酵素の構造・機能に関する比較生化学的研究を進めた。
カテコ-ル1,2-二原子酸素添加酵素のリジルエンドペプチダ-ゼによる消化ならびにBrCN分解によって生じたペプチドを高速液体クロマトグラフィ-によって分離精製し、気相法シ-クエンサ-を用いて、それぞれのペプチドのN末端アミノ酸配列を決定した。この結果に基づいてチオホスファイト法によってオリゴヌクレオチドを合成した。これらの合成オリゴヌクレオチドをプライマ-としてPCR(polymerase chain reaction)を行い、主生成物をシ-クエンスによって確認した。一方、Pseudomonasの染色体DNAからgeneライブラリ-を作成し、PCRの生成物をプロ-ブとしてハイブリダイゼ-ション法によってクロ-ニングを行い、目的とする本酵素の遺伝子を含むクロ-ンを得た。現在、本酵素遺伝子の塩基配列決定を進行中である。
既にDNA塩基配列を決定しているカテコ-ル2,3-二原子酸素添加酵素は可視部に吸収を示さないために活性部位の構造あるいは反応機構の解析が困難であったが、拮抗阻害剤であるoーニトロフェノ-ルが本酵素の有用な活性部位検索試薬となる事を明らかにした。即ち、oーニトロフェノ-ルは410nmに吸収極大を示すが、酵素との結合により405nmにブル-シフトし電荷移動複合体によると考えられる660nm付近の幅広い吸収を示した。さらに、本複合体の円二色性、共鳴ラマンスペクトルなどの研究結果から、基質と酵素の結合様式を推察した。

研究成果

• [文献書誌] C.Nakai,K.Horiike,S.Kuramitsu,H.Kagamiyama and M.Nozaki: "Three isozymes of catechol 1,2-dioxygenase (pyrocatechase),αα,αβ,and ββ,from pseudomonas arvilla Cー1." J.Biol.Chem.205. 660-665 (1990)
• [文献書誌] M.Nozaki,C.Nakai,K.Horiike,S.Kuramitsu,and H.Kagamiyama(edited by C.C.Reddy,G.A.Hamilton and K.M.Medyastha): "Three isozymes of catechol 1,2-dioxygenase (pyrocatechase) from Pseudomonas arvilla Cー1." Biological Oxidation Systems. 1. 405-416 (1990)
• [文献書誌] 野崎 光洋,山本 尚三: "酵素による酸素化反応" 季刊化学総説. 7. 147-161 (1990)
• [文献書誌] K.Horiike,T.Kobayashi T.Ishida and M.Nozaki(edited by S.Yamamoto,M.Nozaki,Y.Ishimura): "oーNitorophenol as an active site probe for catechol 2,3-dioxygenase." Yamada Conference XXVII International Symposium on Oxygenase and Oxygen Activation. 15-18 (1991)
• [文献書誌] 村松 正實・永井 克孝・本庶 佑(監訳),野崎 光洋(分担翻訳): "ストライヤ-生化学" バイオメディックス, 1092 (1991)