研究概要 |
1.<ヒト精子染色体に及ぼす放射線の影響>___ー 種々の線量(6.6ー423.1sGy)の^<137>Csーγ線をin vitroで照射したヒト精子をハムスタ-卵に体外受精させ、1細胞期に精子染色体異常出現率を調査した。照射群と対照群合わせて3,225精子を染色体分析した。構造的染色体異常をもつ精子の出現率は低線量域(6.6ー109.3cGy)では線量に伴って直線的に増加したが、その後増加率は次第に低下した。また、切断型異常の出現率は交換型異常のそれよりはるかに高かった。線量効果関係は切断型異常および染色体型交換では直線的であったが、染色分体型交換では二次曲線的であった。 2.<ヒト精子染色体異常自然発生率>___ー 正常男性8名から得た1,661精子を染色体分析した。異数性(1.6%)および構造異常(13.3%)の出現率はこれまで我々が得た結果とほぼ同じで、構造異常をもつ精子の出現率に個人差(8.6ー18.4%)があることも再確認された。観察された異常は出現頻度の高い順に切断、染色体断片、交換、ギャップおよび欠失であった。 3.<ヒト精子染色体に及ぼす化学物質の影響>___ー (1)トリエチリンメラミン、(2)サイクロフォスファミド、(3)マイトマイシンC、(4)ブレオマイシン、(5)ダウノマイシンの5医薬品について予備実験を行った。すなわち、種々の濃度(0.01ー1000μg/ml)の薬品をin vitroでヒト精子(一部は凍結ー融解ウシ精子を使用)に作用させ、精子の運動能、受精能獲得率、体外受精率に与える影響の基礎デ-タを集積した。また、少数ではあるが(2),(4)について染色体分析を行い、(4)で構造異常の増加傾向を認めた。これらの結果に基づき、次年度は精子染色体分析の本実験を行う。 4.<凍結保存精子の染色体分析>___ー ヒト精子用凍結保存液4種(Ackerman's medium,HSーII medium,HSPM medium,modified,HSPM medium)をテストした。精子蘇生率はHSーII mediumを用いた場合に最もよかったが(40ー50%)、その後受精能獲得処理の段階で精子活性が低下し、体外受精の成功率は低かった。今後、種々の改良が必要である。
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