研究分担者 |
石田 勇治 東京大学, 教養学部, 講師 (30212898)
工藤 章 東京大学, 教養学部, 助教授 (90092197)
臼井 隆一郎 東京大学, 教養学部, 助教授 (90092668)
保坂 一夫 東京大学, 教養学部, 教授 (20074289)
西川 正雄 東京大学, 教養学部, 教授 (10012353)
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研究概要 |
平成2年度は、来年度に予定される研究成果の総合化に向けての前段階として、新聞・雑誌・ビデオなどの一次資料や研究論文・学術図書を中心とする二次資料の収集、整理、翻訳を行なう一方で、研究分担者各人の個別研究を精力的に進展させた。東西ドイツの「統一」という新たな事態に直面し、研究視角のより一層の精緻化と新たな問題設定の必要性を強く感じたわれわれは、報告と討議に基づく活発な研究会議を積み重ねたが,ドイツ人関係者との接触の機会をも得た。例えば、両ドイツ間での「経済・通貨・社会同盟」が実施された直後の7月の会議には旧西独商工会議所代表を招き、ドイツ統一の社会経済的コストの甚大さについての説明を受け、研究遂行上貴重な示唆を得た。一方、分担者の個別研究では、まず代表の坂井が9月の研究会議で今回の統一の特質をビスマルクによる帝国創設との比較において捉えた報告を行ない,歴史学の立場から東西ドイツ関係史研究の意義を明示した。10月の会議では工藤がヨ-ロッパ(EC)経済統合に向けて期待されるドイツの役割と可能性を経済学の視点から,11月には保坂が旧東独知識人の統一への関わりを文学の立場からそれぞれ検討した。同じく11月には西川が,大量失業や東西の経済格差,感情的対立など統一によって生じたドイツ国内の新しい社会問題を論じ,12月には東西に分断されていた教会組織が統一で演じた政治的,精神的役割に光をあてた。1月の会議では石田が旧東独の反体制勢力の精神的理念を西側の反体制勢力のそれと比較し,2月には臼井と高橋が戦後東西ドイツの代表的文学作品をとりあげ、そこに見られる政治性の限界と可能性を検討した。これらはいずれも本研究の基盤を成すもので、すでにその一部は裏面の通り公刊されている。来年度はこれらの成果をさらに高め,分担者の研究視角を相互に鍛えつつ,研究全体の総合化とその刊行を追求する。
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