1.栽培植物のキビ・サマイ、雑草のイヌキビ・ヌカキビなどを実験材料に用い、作物・雑草複合を考慮しながら、キビに中心にその起原とユーラシアにおける伝播について検討した。 2.形態的・生態的特性の比較から、インドから中央アジアにかけての系統が祖先型に近いと考えられ、日本への伝播ルートについてもシベリアルートとヒマラヤ南麓ルートが推定された。 3.テスター6系統とユーラシア各地の70系統との交雑実験および遺伝的特性から、中央アジアから北上し東西へ、および南下して東への伝播ルートの可能性が示唆された。 4.種子内乳でんぷんのもち・うるち性については、もち性系統が東アジアに局在し、中間性は北海道に多いことが明らかになった。内外穎のフェノール呈色反応は一般にポジティブの系統が多かったが、東アジアと中央アジアの系統はネガティブが多かった。穀粒の脂肪酸組成については、総脂質含量はもち性系統で、中性脂質含量はうるち性系統で高く、リノール酸などの個別成分ももち、うるち性系統間で差違が認められた。種子にエステラーゼ・アイソザイムの変異については東アジアからネパールで共通性が高く、南インドから中央アジアにおいて高い変異が見られた。 5.パーボイル加工による効果については、イネ・アワでもみすり効率が高く、遊離アミノ酸についてはイネ・キビで増加傾向が認められ、食味向上が示唆された。 6.本研究の実験結果はデータベース化しており、今後の統計分析に供する予定である。
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