研究概要 |
江戸時代の江戸の古地図すなわち江戸図は,歴史および地誌の資料としてのみならず,都市の社会的発展および江戸住人の都市観の変遷を知るための重要なデ-タとしても有用である.しかし江戸図は多様な形式で描かれており,相互比較が非常に困難で,多面的な活用が進んでいない.本研究では多数の江戸図をコンピュ-タにより統一された枠組で比較・解析するための各種手法とそれを用いたデ-タベ-スの構築を目的とする.本年は補助金交付の決定が第3次であったために,コンピュ-タへの江戸図デ-タの入力方法の決定と江戸図上の街区を相互比較するための数学的手法の開発に重点を置いて,以下の研究を行った. 1.江戸図資料の収集を行い,江戸図間の相互比較の基準となる近代図および『寛永江戸図』,『御府内沿革図書』など各種江戸図と関連資料を入手した. 2.江戸図を街区に分割して扱う方法を検討し,街区の外形を座標値によってコンピュ-タに入力する方法とコンピュ-タ内でのデ-タ構造を決定した. 3.江戸図のうち『寛永江戸図』と近代図を製図機の座標読み取り機能を用いて実際にコンピュ-タに入力し,グラフィック描画できることを確認した.なお基準方位として南北を取り,江戸初期の市街地に基準距離を設定した. 4.四辺形を基本として江戸の街区を表わし,江戸図街区とそれに対応する近代図の街区の間の相互写像を射影変換によって表現する手法を開発した.この手法を用いれば,江戸図のミクロおよびマクロな歪みを,本来であれば正方形となる区画の江戸図上での形状により視覚的に表示することが可能になる.
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