研究概要 |
1.モデル膜としてジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)のベシクルを調製し,DPPC二分子膜の相転移におよぼす圧力と麻酔薬の効果について検討した。2つの相転移(前転移と主転移)温度は加圧(300barまで)により上昇し,吸入麻酔薬ハロセンの添加により降下した。麻酔作用の圧拮抗モデルとして,物理化学的な考察を行った。相転移温度の降下度より熱力学的に二分子膜と水相間における麻酔薬の分配係数を算出することができる。分配係数は加圧により減少した。熱力学式より,麻酔薬の水中から二分子液晶相への移行体積変化を見積もることができ,ハロセンについては20±4cm^3・mol^<-1>であった(第43回コロイドおよび界面化学討論会で発表)。 2.局所麻酔薬に選択的に応答する電極を作製した。プロカイン,テトラカイン,ジブカイン,ブピバカイン,リドカイン等の10^<-5>〜10^<-2>mol・dm^<-3>の濃度範囲でネルンスト応答が得られた。pHおよび共存イオンの影響についても検討した(第36回ポ-ラログラフィ-および電気分析化学討論会で発表)。また、プロカイン電極を用いてSDSミセルへの局所麻酔薬プロカインの取り込み機構について検討した。質量作用モデルによりミセルへの結合定数を見積もることができた(第43回コロイドおよび界面化学討論会で発表)。これらの電極が1000barまでの加圧下でも作動できるように改良している。 3.ミトコンドリアの膜電位を簡便に測定する方法として,テトラフェニルホスホニウム(TPP)イオンに応答する被覆線型電極を作製した。10^<-7>〜10^<-3>mol・dm^<-3>の濃度範囲でネルンスト応答を示した。ミトコンドリア培地に含まれる種々のイオンの選択係数も測定した。妨害イオンもなく,TPPイオンに選択的に応答することが分かった(Anal.Lett.,90(2),1991掲載予定)。
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