研究概要 |
本年度は次の二つの項目に関する研究を行った。 (1)コラ-ゲン遺伝子構造の解析 バフンウニの殻から抽出・精製したコラ-ゲンに対する抗血清を得た。またバフンウニの殻よりmRNAを抽出し、このmRNAを鋳型としたcDNAのライブラリ-を発現ベクタ-λgt11を用いて作製した。バフンウニ殻のcDNAライブラリ-を上記の抗血清によってスクリ-ニングした結果、陽性クロ-ンHpcolー1が単離された。Hpcolー1は3.0kbで、N端側にコラ-ゲン特有の配列を持つ。殻のmRNAとのノ-ザンブロット解析ではmRNAの大きさは約5kbであり、ナマコ類、ヒトデ類においても発現しているので棘皮動物において共通性が高い。さらにHpcolー1は幼生から通じて発現している。抗血清によるイムノブロット、免疫組織化学ではこのコラ-ゲンは幼生期から体全体に広く分布していることが示された。 (2)カイメンのコラ-ゲンの生化学的性質 可溶化が著しく困難なカイメンのコラ-ゲンを単離するため、合成中のコラ-ゲンについて研究を行った。解離したカイメンの細胞を静置しておくとやがて再集合し、さらにもとの構造へと再生する。この過程においてコラ-ゲンの合成について調査した。コラ-ゲンの合成阻害剤であるα,α'ージピリジルは解離細胞の再集合は妨げないが、その後の再生を抑制する。また架橋阻害剤であるβーアミノプロピオニトリルも再生過程を妨害する。これらの結果は、カイメンの解離細胞が再集合後の再生過程で、コラ-ゲンを合成することを示唆するものである。
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