研究概要 |
本年度は次の三つの項目に関する研究を行った。 1.コラ-ゲン遺伝子構造の解析 バフンウニとアメリカムラサキの殼からコラ-ゲンを精製し電気泳動解析を行い,3本のα鎖(α120,α90,α140)を確認した。バフンウニ成体よりmRNAを調製し,cDNAライブラリ-を作製した。これより,コラ-ゲンcDNAクロ-ン(Hpcol1)を得た。このクロ-ンは,エピト-プセレクション法によって,α120鎖とα140鎖をコ-ドしていることを明らかにした。Hpcol1の全塩基配列を決定したところ,この一次構造は,脊椎動物の線維性コラ-ゲンのそれと高い相同性をもっていることが判った。最も単純な体制をもつ多細胞動物である中生動物,ニハイチュウにコラ-ゲン遺伝子が存在するかを,Hpcol1をプロ-ブにして調べたところ,存在しない可能性が高いことが示唆された。 2.カイメンとクラゲのコラ-ゲンに関する研究 ムラサキカイメンから解離細胞を得て,再集合実験を行った。再集合過程で,58kDaのコラ-ゲン様ペプチドが新たに生合成され,ついで架橋結合ができて,この過程において重要な役割を果たしている可能性がでてきた。ミズクラゲのコラ-ゲンは、大部分が塩可溶性コラ-ゲンとして抽出できた。可溶性コラ-ゲンのα鎖の分析を行った。 3.線維茅細胞の器官特異性に関する研究 脊椎動物における主たるコラ-ゲン産生細胞は線維茅細胞であるが,この細胞の起源や器官特異性に関しては不明なことが多い。マウス新生児の皮膚,肺及び心臓から線維茅細胞を得て培養した。この培養細胞を用いて,(1)合成タンパク質の二次元電気泳動パタ-ン (2)コラ-ゲンとフィブロネイチンの合成速度 (3)コラ-ゲンゲル収縮能の3点について調べ,それぞれの線維茅細胞に由来器官依存性を認めた。
|